ソフトバンクは3月18日、2015年7月にスタートした「SoftBank Innovation Program」の1次選考で国内外企業8社を選出したと発表した。5つの案件に取りまとめ、テストマーケティングを実施する。

同社が選出した企業は以下の8社で、日本企業の選出はリノベるの1社のみ。海外企業が7社となっており、日本法人による応募はアッサアブロイジャパンのみだった。

  • リノベる(リノベーションサービスをワンストップで展開)
  • KAMAQ HOLDINGS(家具ベンチャーで家具にセンサーを埋め込んだスマートホームプロダクトを提供)
  • アッサアブロイジャパン(世界最大級の総合セキュリティ企業で、錠前ソリューションを提供)
  • MoBagel(IoTデバイスに特化したクラウド型リアルタイムデータ解析プラットフォームを提供)
  • Urban Engines(都市交通の移動データをリアルタイムに可視化・分析・予測するエンジンを開発)
  • Drivemode(スマートフォンで車載器の代替を行うアプリ・UIを開発)
  • BuzzElement(ショッピングモールなどの地域特化型クーポン配信、事前決済プラットフォームを融合したデジタルマーケティングソリューションを提供)
  • マイクロストラテジー・ジャパン(データ分析プラットフォームなどを提供)

同プログラムでは、「スマートホーム」と「コネクテッド・ビークル」「デジタルマーケティング」「ヘルスケア」の4分野でソリューションや技術のアイデアとソフトバンクのリソースを組み合わせた企画を募っていたが、最終的に採択されたものはヘルスケアを除く3分野だった。また、8社の提案は5つの案件にまとめられ、今後順次、テストマーケティングを実施していく。年内にはテストを完了させる意向で、最終的な商品化・サービス化を目指す。

「スマートホーム」

「スマートホーム」分野では、「スマートホーム×リノベーション」と「OA機器・家電×ビッグデータ」を実施。

「スマートホーム×リノベーション」は、リノベる、KAMAQ、アッサアブロイジャパンの3社によるテストマーケティング。IoTデバイスやサービスを顧客のライフスタイルに合わせて提案する。唯一日本企業での選出となったリノベるは、開発を進めていたスマートハウスアプリが採択された。ソフトバンクが開発資金の提供を行うほか、マーケティングや開発の支援、商業化に向けた販路開拓、IoTデバイス提携先の共同開拓などを行っていく。アプリのリリース時期は2016年秋を目指すという。KAMAQやアッサアブロイについては、そのIoTデバイスの提携先となり、スマートハウスアプリでKAMAQのスマート家具、アッサアブロイのスマートロックなどを操作できるようになる見込みだ。なお、テストマーケティングはリノベるのIoTショールーム「コネクトリーラボ」などで行われる予定となっている。

「OA機器・家電×ビッグデータ」では、MoBagelがIoTデバイスに特化したクラウド型リアルタイムデータ解析プラットフォームを提供しており、このナレッジを活かしてデバイスの故障予測を行う。なんらかの障害が起きる前に故障を予測することで、メンテナンスサポートなどに活かせる。同様の取り組みでは、PTCのIoTプラットフォーム「ThingWorx」を活用した事例がある。

コネクテッド・ビークル

「コネクテッド・ビークル」では、「都市交通×ビッグデータ」と「スマートフォン×車」を実施。

「都市交通×ビッグデータ」はUrban Enginesが担当。同社は、都市交通の分析クラウドサービスを提供しており、GoogleでAdsenseなどの開発担当VPだったShiva Shivakumar氏らが創業した。テストマーケティングでは、ICカードの利用履歴やGPS、天気などの人の移動情報、移動に影響する情報をクラウドに蓄積・分析し、ノイズ除去や予測ロジックを用いて、その後の交通状況予測やエリア情報などを提供する。海外ではすでに事例も出ているが、国内で有効なソリューションとなるかテストマーケティングを通して見極める。

「スマートフォン×車」を担当するDrivemodeは、スマートフォンで車載器の代替を行うアプリ・UIの開発メーカー。日本では車載器が多いものの、諸外国、特に新興国などは車載器を搭載していない車も多いことから、スマートフォンによる機能の代替が有望視されている。日本においても、地図が更新されない車載器を、最新の地図が常に更新されるスマートフォンのナビゲーションアプリで代替するニーズがあり、ソフトバンク子会社のヤフーが提供するYahoo!カーナビなどは大きな人気を集めている。ソフトバンクによると、Drivemodeはヤフーなどとアプリ開発で協力する可能性もあるとしており、Yahoo!カーナビがさらに進化するかもしれない。

デジタルマーケティング

デジタルマーケティングでは、BuzzElementとマイクロストラテジー・ジャパンが「スマートフォン×事前決済」をテストマーケテイング。

両社は、ショッピングモールなどで事前決済型のテストマーケティングを行う。バウチャーと呼ばれるクーポン配信を"時間"と"場所"を限定して行うことで、一種のフラッシュマーケティングとして、利用者の動向を追う。事前決済は、スマートフォン上で決済を完結し、その後に物品のみを取りに行く。一般的な商慣習とは異なるものの、スマートフォン時代の決済方法としては有望なことから、テストマーケティングを通して、新たな決済のあり方受け入れられるかを見極める。