富士フイルムは3月17日、再生医療のための細胞培養に必要な同社開発の細胞外マトリックス「cellnest ヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチド(セルネスト)」を利用し、ラットの骨再生能力を大幅に高めることに成功したと発表した。

同成果は、3月18日に大阪国際会議場で開催される「第15回日本再生医療学会総会」にて発表される予定。

骨の欠損治療には、他の組織に浸食されないように骨欠損部に新たな骨が形成されるためのスペースを確保することと、骨形成を行う骨芽細胞を集積させ新たな骨の再生を促すことが必要となる。同治療には、骨補填剤が利用されるが、既存の骨補填剤ではこれら2つの課題を同時に解決することができなかった。

セルネストは、遺伝子工学を用いて同社が開発した人工タンパク質で、細胞の表面に存在するインテグリンとの高い接着性を持つ。同社は今回、セルネストの凍結乾燥体を架橋することで、生体内での分解速度を最適化したものを作製。同セルネストを顆粒状にしたものと、既存の骨補填剤A、Bをそれぞれラットの頭蓋骨欠損部に移植して、4週間後の移植部位の骨の再生状況を比較した。

この結果、骨補填剤Aでは骨は再生するものの周辺部と比べ骨が薄い、骨補填剤Bではスペースは確保できるが骨の再生が見られないといった問題があったが、架橋したセルネストを移植した場合、欠損部全体に良好な骨形成が見られ、周辺部と同等以上の厚みの骨が再生した。

今回の成果について同社は、今後特に医療ニーズの高い歯槽骨の再生などへの活用が期待できると説明している。

「セルネスト」を移植した場合

骨補填剤Aを移植した場合

骨補填剤Bを移植した場合