連日報道され話題になっている、プロ野球選手による野球賭博。選手が自分のチームの試合結果を対象に金銭のやりとりをしていた問題だが、それらは違法なのだろうか。アディーレ法律事務所の鈴木淳也弁護士に聞いてみた。

「賭博罪」に当たる行為

――プロ野球選手が公式戦の勝敗に絡んで、現金のやりとりをするのは違法なのでしょうか。

鈴木弁護士: これまでの判例をみてみると、判例自体は古いのですが、金銭そのものを賭けるとなると、賭博罪にあたるとされています。よって、金銭をかけていた場合は、賭博罪が成立する可能性が高いでしょう。

それでは、勝った方が明日のランチをおごるという賭けではどうでしょうか? その程度の賭けであれば、「一時の娯楽に供する物を賭けた」にとどまることになりますので、賭博罪が成立しないと考えられます。また、食事代金を賭けることは許容され得る可能性が高いので、即時に消費する物自体でなくてもそれと同程度の金額であれば「一時の娯楽に供する物」を賭けたといえると考えられるでしょう。

競馬・競輪などのように、法律で認められている賭博は賭博罪が成立しませんが、それ以外であれば基本的に、賭博罪が成立します。

今回明らかになった巨人での金銭のやり取りに関して、「験担ぎ」や「モチベーションの維持」の意味合いを強調したとしても、形式的にみると試合の勝敗によって金銭の得失を争っていることは明白です。

そして、勝った場合に声だしの人間が取得する金銭が数万円にもなるということからすれば「一時の娯楽に供する物」を賭けたと解釈するのは難しいように思われます。したがって、立件されるかどうかは別として、形式的には賭博罪に当たる行為といえます。

違法な賭博、合法な賭博の違いは?

――違法な賭博と合法な賭博は何が違うのでしょうか? 合法な賭博にはどんなものがありますか?

鈴木弁護士: 違法な賭博と合法な賭博の違いを一言でいえば、「特別法によって認められているかいないか」ということです。

日本で認められているものとしては競馬や競輪などの公営競技があげられます。競馬や競輪は賭博ではありますが、競馬は競馬法、競輪については自転車競技法によって、勝敗結果にお金を賭けることが認められています。

競馬の売上金の一部は、国庫に納付され畜産振興事業や社会福祉事業に使われている。その他の公営競技においても、売り上げの一部は社会に還元されるシステムとなっています。

また、サッカーでは試合結果を予想して当たれば金銭がもらえるtotoというくじがあります。これはスポーツ振興くじというもので、スポーツ振興投票等の実施に関する法律で認められております。売り上げの一部がスポーツ振興の助成に使われるようになっており、社会に還元されるシステムになってます。同法律はサッカーの試合だけを対象としており、野球の試合は含まれていません。

このようなしっかりとしたシステムが整っている中で勝敗結果にお金を賭けるのと、特定球団の選手間だけで賭けるのとでは社会的意味合いは大きく異なります。

――ありがとうございました。

執筆者プロフィール: 鈴木淳也弁護士
弁護士法人アディーレ法律事務所所属。札幌弁護士会所属。全国に2名しかいない、気象予報士の資格を持つ理系弁護士として、困っている人に寄り添う弁護活動を行う傍ら、お天気情報をブログで発信している。また「ハンゲキ!」(フジテレビ)では詐欺師を追い詰めるクールな弁護士として出演。さらに「5時に夢中」(TOKYO MX)にレギュラー出演するなど幅広いメディアで活躍中。

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