[アーロと少年]ソーン監督と製作のリームさんに聞く 途中で監督交代「引き継ぎ中は緊張で夜も眠れない状態」

  [2016/03/13]

ディズニー/ピクサーの劇場版アニメーション「アーロと少年」のピーター・ソーン監督とプロデューサーのデニス・リームさん

 ディズニー/ピクサーの劇場版アニメーション最新作「アーロと少年」が12日から公開される。今から6500万年前、地球に衝突するはずだった隕石(いんせき)が、もし、わずかにずれて地球にぶつからなかったとしたら? そんな仮定のもとで物語が展開する今作は、当初の予定から約1年半、公開が先延ばしされ、米国では2015年11月に公開された。公開延期はピクサーの「作品をよりよくしたい」という思いが働いた結果だという。前任の監督は降板。新たな監督に抜てきされたのが、ピーター・ソーンさんだ。引き継ぎ中はプレッシャーを感じ、「すごく怖かったし、緊張もした」と話すソーン監督と、ソーン監督を支えたプロデューサーのデニス・リームさんが2月に来日、インタビューに応じた。

 ◇プロデューサーは「ワクワク」

 常に新しいアイデアで、観客をあっと驚かせる作品を世に送り出すピクサー。今回もまた、恐竜の子供と人間の少年の友情という“ありえない”コンセプトの下で物語が進む。主人公は、3人兄姉の末っ子の恐竜アーロ。甘えん坊で怖がりの彼は、あるとき、嵐で父を亡くし、自身も川の激流によって、家族から遠く離れた見知らぬ土地に流されてしまう。迷子の彼を救ったのは、見たこともない“人間”という小さな“生き物”だった。

 恐竜と人間の子供の友情物語。このコンセプトを聞いたとき、リームさんは、「恐竜という題材を、ピクサーの素晴らしいアーティストたちがどのようにスクリーンに描くのか、とてもワクワクした」と話す。だが、いきなり監督に抜てきされたソーン監督は「ワクワク」するどころではなかったという。

 ◇監督は「プレッシャー」

 ソーン監督はこれまで「ファインディング・ニモ」(2003年)や「ウォーリー」(08年)といった作品にスタッフとして参加し、短編映画「晴れ ときどき くもり」(09年)で監督デビューを果たしてはいたが、長編作品でメガホンをとるのは今作が初めて。それだけに「引き継ぎ中は、緊張で夜も眠れないような状態だった」と打ち明ける。ただ、スケジュールがタイトだったことには救われた。「あれこれ考える時間がなかった」からだ。

 加えて、「ストレスを感じているときも、それをスポンジのように吸収し、話を聞いてくれる」リームさんをはじめ、周囲の人たちの協力にも勇気づけられた。「締め切りに間に合うのか? それはできる。では、いい映画にできるのか? そのプレッシャーを自分の課題」ととらえ、仕事を進めていったという。そして、完成に漕ぎつけてからしばらくたった今、「大変ではあったけれど、そのプレッシャーは必要なものだったのかもしれません」と笑顔を見せる。

 ◇ピクサーが大切にするもの

 リームさんはソーン監督について、「一緒に仕事をして、すぐに特別な才能の持ち主だと感じました」と語る。「カリスマ性があって、すごく仕事熱心。もちろん才能はあるし、スタッフをはじめ、映画に貢献するすべての人に対して敬意を払い、謙虚な態度で接する素晴らしい人」とその人柄を絶賛する。

 かたやソーン監督もリームさんに対して、「彼女が最優先させることは、作品が可能な限り最高になるように、ということ」と話し、締め切りに間に合わせることを重視するプロデューサーもいる中で、「彼女はそうじゃないんです。今回の映画も、いいものになっていないということが分かったから、(前任の監督からの)“引き継ぎ”という形になりました。他のスタジオだったら、もしかしたら、そのまま出しちゃえということになっていたかもしれません。ですから、彼女のそういった考え方は、ピクサーの考え方でもあるわけです」とリームさんと、ひいてはピクサーという会社の姿勢に敬意を表した。

 ◇作品に反映された母との関係

 恐竜のアーロと人間の少年スポットは当然、共通の言語を持たない。そもそも、スポットは言葉を持たない。その2人が、互いのジェスチャーや目の動きで、互いの考えを読み取ろうとする姿は、今作の見どころの一つだ。ソーン監督自身、「2人がそれぞれに家族を亡くしたことを伝え合う円を描くシーンとラストシーンには、そのあたりがより濃く出ていると思います」と話す。その、ジェスチャーによる意思疎通には、ソーン監督自身の韓国人の母との関係が反映されている。

 「僕を含めて、兄弟はみな米国生まれの米国育ちなので英語しかできません。母は母で英語がまったく話せない。ですから僕らは、相手が言いたいことを、一生懸命、互いのボディーランゲージで読み取るしかありませんでした」と話す。そういった経験が、アニメーション作りにおいて、「口の形によって、どのような感情を表現しようとしているのかを考えることにつながっている」とソーン監督は語る。それを隣で聞いていたリームさんは「その点が、彼のずば抜けた観察眼、洞察力につながっていると思います」と指摘し、「ピクサーといえども、そういった力に長けたアーティストは、彼以外にいません」とその才能を高く評価した。

 ◇おなじみの“隠れネタ”をちょっとだけ紹介

 ところで、ピクサーの作品には、毎回、別のピクサー作品のキャラクターやピクサーならではのアイテムが仕込まれているのは周知のことだ。今作も例外ではない。そこで、ソーン監督とリームさんに、差し障りのない範囲でその“隠れネタ”を教えてもらうと……。

 「“ピザ・プラネット”のトラックは二つ出て来ます」とソーン監督。リームさんが、「とてもとても早い段階でね」と補足すると、ソーン監督は、「最初のシーンで1台出てきます」と明かし、「あとは、(自身の監督作)『晴れ ときどき くもり』のキャラクターも出ています」と続ける。なんでも、ピザ・プラネットのトラックは「屋外の自然の風景のどこに入れるか、かなり苦心した」そうだ。

 ほかにも、リームさんが卒業したカリフォルニア大学バークレー校や、ピクサー作品でおなじみの“ルクソボール”も登場しているという。もちろん、「カルアーツ(カリフォルニア芸術大学)のみんなにとってなじみ深い“A113”(同大学にある教室の番号)という記号も入っています」(ソーン監督)と抜かりない。そして、ひとしきり明かしたあとで、ソーン監督は「『ファインディング・ドリー』のキャラクターも出て来ますが、これはかなり難しい。ヒントは、当然水です」と、7月公開予定のピクサーの次回作をアピールすることも忘れなかった。映画は12日から全国で公開中。

 <ピーター・ソーン監督のプロフィル>

 米ニューヨーク州出身。米カリフォルニア芸術大学(カルアーツ)でキャラクター・アニメーションを学び、在学中に「アイアン・ジャイアント」(1999年)の製作に携わる。2000年、ピクサー・アニメーション・スタジオに入社。「ファインディング・ニモ」(03年)や「Mr.インクレディブル」(04年)、「レミーのおいしいレストラン」(07年)、「ウォーリー」(08年)にスタッフとして参加。09年の短編映画「晴れ ときどき くもり」で監督デビュー。「アーロと少年」(15年)は長編初監督作。

 <デニス・リームさんのプロフィル>

 米カリフォルニア州出身。カリフォルニア大学バークレー校で学び、低予算映画やCM、ミュージックビデオなどの制作アシスタントとしてキャリアをスタート。その後、リチャード・エドランドさんが設立したボス・フィルム・スタジオに5年間在籍後、ILM(インダストリアル・ライト&マジック)に移籍。13年間のILM在籍中には、「ディープ・インパクト」(1998年)や、「ハリー・ポッターと賢者の石」(2001年)、「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」(05年)、「ミッション:インポッシブル3」(06年)などに携わった。06年、「カールじいさんの空飛ぶ家」(09年)のアソシエイト・プロデューサーとしてピクサー・アニメーション・スタジオに入社。「カーズ2」(11年)に続いて、今作「アーロと少年」が2作目のプロデュース作となる。

 (取材・文・撮影/りんたいこ)


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