米Googleは3月9日(現地時間)、Androidの次期メジャーリリース「Android N」(仮称)を発表、開発者向けプレビュー版の提供を開始した。Preview 1は「マルチウインドウ(Multi-Window)」「ダイレクトリプライ通知(Direct reply notifications)」「バンドル通知(Bundled notifications)」などをサポートする。

ここ数年、Googleは開発者カンファレンスGoogle I/Oに合わせて5月頃にAndroidの次期メージャーアップデートのプレビュー版を発表していたが、今年は数カ月早いタイミングでの発表になった。エンジニアリング担当バイスプレジデントのDave Burke氏によると、開発者からのフィードバックを収集する期間を長くし、またホリデーシーズン商戦に向けて夏にはデバイスメーカーにAndroid Nを提供できるようにするために開発中のビルドの提供を早めた。

プレビュー版のイニシャルリリースはアルファ版であり、開発者のみを対象にした提供になっている。対応デバイスは、Nexus 6P/6/5X、Nexus Player、Pixel Cなど。Android Beta Programに参加していれば、同プログラムを通じたAndroid Nプレビュー版へのOTAアップデートを受けられるようになる。

開発プレビュー・プログラムは、最初の3つのプレビュー(プレビュー1~3)でサードパーティ開発者に既存のアプリの互換性を確認してもらいながら、徐々に提供するAPIや機能を増やしていく。プレビュー2でベータに移行。プレビュー4でAPIとSDKの正式版、Playが整えられ、この段階で開発者はGoogle Playのアルファまたはベータ・チャンネルを通じてAndroid N向けのアプリを提供できるようになる。プレビュー5で最終テスト用のシステムイメージが仕上げられ、正式版リリースは今年第3四半期になる。

イニシャルリリースが備えるAndroid Nの新機能を見ていくと、マルチウインドウはSplitスクリーン・モード(モバイルデバイス)とピクチャーインピクチャー・モード(Nexus PlayerなどTVデバイス)をサポートする。Splitスクリーンは、1つの画面を分割して2つのアプリを並べて表示する機能だ。たとえばWebブラウザとマップ・アプリを並べて表示し、アプリを切り換えることなく、ブラウザで調べている店の場所をマップで確認するというようなことが可能になる。iOSのSplit ViewはiPadのみの機能で、左右の分割に限られるが、Android NのSplitスクリーン・モードはスマートフォンでも利用でき、左右だけではなく上下の分割もサポートする。アプリの表示サイズは、2つのアプリを分割する線をドラッグして調整できる。

ピクチャーインピクチャーは、TVの大きな画面の一部に小さな画面を別表示する。ドラマなどを観ていて何かを調べたくなった時に、動画再生を小さな画面で継続しながら、バックグラウンドの大きな画面で検索するというようなことが可能だ。TV向けには他にも、time-shifting APIを通じたTVインプットサービスの機能が拡張されており、録画機能を実装できるようになった。

ダイレクトリプライ通知は、Android Wearで採用されたRemoteInput notification APIを用いたもので、インラインリプライをサポートし、通知のインターフェイスから直接、テキストメッセージへの返信やタスクリストのアップデートなどを行える。バンドル通知はAndroid WearのNotification Stackと同じような機能で、同じアプリからの通知をひとまとめにして通知画面を整理する。グループ化された通知は、2本指のジェスチャーまたは展開用のボタンをタップして開くようにデザインすることが可能。

Data Saverモード

Android Nでは、様々な効率性の向上が図られている。まず、セルラーデータの消費を節約できるデータセーバー(Data Saver)モードを備える。有効にすると、デバイスがデータ伝送を監視し、バッググラウンドのデータ利用をブロックしたり、ストリーミングのビットレートを制限するなどして限られたデータ通信量を効率的に使用できるようにする。Android 6.0 Marshmallowで導入された省電力機能「Doze」が向上し、端末を長時間使用していない時だけではなく、スクリーンが点灯していない時にこまめに機能させられるようになる。また、Project Svelteの効果で必要なメモリー量が抑えられており、幅広いデバイスにAndroid Nは採用できるという。

Android Nの発表に関連して、今年のGoogle I/O(5月18日~20日)の基調講演の内容も話題になっている。昨年までGoogleは新しいAndroidの説明に長い時間を費やしていたが、今年はすでにAndroid Nの発表を済ませてしまっている。Android Nの発表を事前にスクープした9to5GoogleのStephen Hall氏によると、AndroidチームはGoogle I/O 2016でベータ段階のAndroid Nを発表することも検討していたが、最終的にはアルファ版のプレビュー提供に踏み切った。Google I/O向けにAndroidチームは「全く異なるものに取り組んでいる」という。