[新井浩文]映画「女が眠る時」を語る 「観客に投げかける映画というのはすてき」

  [2016/03/06]

出演した映画「女が眠る時」について語った新井浩文さん

 お笑い芸人のビートたけしさんが主演した映画「女が眠る時」(ウェイン・ワン監督)が公開中だ。スペイン人作家ハビエル・マリアスさんの短編小説「WHILE THE WOMEN ARE SLEEPING」が原作で、ワン監督にとって初めてのオール日本人キャストによる邦画作品となった。たけしさんが12年ぶりに自身の監督作品以外で映画の主演を務めているほか、西島秀俊さん、忽那汐里さん、小山田サユリさんらが出演。主人公らが滞在するリゾートホテルで起きるある事件を調べにやって来た刑事・石原役の新井浩文さんに話を聞いた。

 ◇ワン監督の演出は「とてもやりやすかった」

 今作について新井さんは、「うち(新井さん)はやるのも見るのもこういう作品の方が好き」と前置きし、「エンターテインメント性が強い作品がある中、お客さんを試しているわけではないけれど、こういう問いかけの映画、観客に投げ掛ける映画というのはすてきだなと素直に思う」と感想を口にする。続けて、「(観客に)受け入れられるのか分からないのですが、やっぱり映画というのはお客さんに見てもらって初めて完成するものだと思っているので、なるべく一人でも多くの人に見てもらいたい」と本音で語る。

 メガホンをとったワン監督の印象を、「演出が細かくて、うちは英語がしゃべれないので助監督の方とか通訳をしてくれたのですが、綿密にコミュニケーションをとる監督だなと思いました」と話し、「とてもやりやすかった」と撮影を振り返る。日本人の監督の違いについては、「監督は日本人でも全員違う」と切り出し、「国籍という意味でいったらないといえばないし、違いは(監督それぞれに)当然あるから、国籍は関係なく、どの監督でも違いはあります」と語る。

 監督からの指示に従って演じたという刑事・石原役。「意識したというよりは監督がそうしてと言ったのですが、くだらない話から入っていったほうが、なんか嫌な感じする」と新井さんはいい、「物事の本質を言わないでネチネチくだらないことを聞いていって、いざ本質というときの区別、プレッシャーの掛け方は監督の演出通りにやっているつもりではあります」と自信をのぞかせる。

 ◇ビートたけしの存在感が「最高にカッコいい」

 今作は西島さん演じる小説家の清水が、リゾートホテルで見かけた異様な存在感を放つ年の離れたカップルの男(たけしさん)と女(忽那さん)に心を奪われ、ついにはのぞきを始め、ストーカー行為に及んでしまう。そんな清水の行動を、新井さんは「高校の時とか部活をのぞきに行ったり、温泉をみんなでのぞきに行ったりとか、もちろん犯罪ですけど、若気の至りというか……」と男性が若い頃にいたずら心を起こすような例を出し、「だからある程度のことはあるかと(笑い)」とその心情に理解を示す。

 初老の男・佐原役のたけしさんの「無言のときの狂気」が印象深いと言い、「映画うんぬんではなくて、たけしさんが持っていらっしゃるものだと思う」と分析。そして、「黙っているだけで伝わるものというか、うちもああいうのを出せたらと思うぐらい、どの作品でもたけしさんの“無のときの破壊力”というのは最高にカッコいい」と絶賛する。

 事件調査のシーンで共演している西島さんには「生々しさ」を感じたという。「のぞいているときの雰囲気とかは、西島さんに『本当に生々しくて普段やっているのでは……と思うぐらいでした』と冗談を言えるぐらいの生々しさ」と西島さんの演技をたたえ、「(西島さんからは)『のぞいてないよ!』と言われたので、『それは当然です。分かってますよ』と返しました(笑い)」と新井さんは楽しそうに話す。

 ◇やってみたい役はミュージシャン

 新井さんは、ドラマ「下町ロケット」(TBS系)での好演も記憶に新しいが、映画やドラマには欠かせない存在で、くせのある役どころや犯人など悪人を演じることも多い。最近では悪役以外を演じることが増えているが、新井さん自身も「年々そうですね」と認めつつも「選んでいるわけではなく、オファーがそうなってきている。年齢とともにいろんな役をやってきて(役の)幅が広がったのか、いいことだと思いますが、いろんな役がバラつきがあって面白い」と充実感をにじませる。

 新井さんは現在放送中のNHK大河ドラマ「真田丸」に加藤清正役で出演しているが、昨年放送された同局のドラマ「64(ロクヨン)」の試写会で、「オファーがあったと思ったら安定の夜の枠だった。(大河ドラマに)呼んでください」と発言したが、「ギャグ交じりにいっていたのですけど……」と振り返るも、「いざ本当に来るとびびります(笑い)。本当に来た!と思って……」と複雑な心境を明かす。

 さまざまな役を演じている新井さんだが、まだ演じたことがない役の中で「やっていなくてやってみたいのはミュージシャン」といい、「普段から音楽がすごく好きなので、バンドマンの役をやってみたい」と理由を説明する。

 ◇今作は「考えるということがとても重要な映画」

 物語は清水の視点で進んでいくが、佳境になる連れて小山田さん演じる妻の綾の存在がクローズアップされていく。「映画マジックというのか“ワン監督マジック”で、もちろん監督は計算でやっているはず」と切り出し、「台本ではある程度の解釈はありますが、(映像を)見ているとすごく緻密な計算がされている。多分、大半の人は最初『うん?』となると思う」と観客側の心情を推し量る。

 さらに、「(観客の)皆さんで“正解”を作っていいと監督が言っているぐらい映画は“正解”がないと思うので、お客さんがどう思うかというのが一番の“正解”」と映画に対する持論を展開し、「そもそも映画じゃなくても人間というのは分かりづらくて、友達だろうが家族だろうが他人だろうが、その人の考えをすべて分かることは不可能だと思っている」と語る。そして、「それだけ分かりづらい生き物が映画を作っているということは、映画が分かりづらくたって全然いいと思っているから、考えるということがとても重要な映画だと思う」と今作へと結びつける。

 忽那さん演じる美樹を「若い色気」、小山田さん演じる綾を「でき上がった色気」と表現する新井さんは、理想の女性像について「うちはちょっと古いから、2歩とか3歩下がって、みたいな女性がとても好き」と話し、「人前では(自分のことを)立ててくれて、ちゃんと気を使えてというのが理想ですけど、現実はなかなか……」と自虐的に言って笑う。

 起きていることが現実なのか妄想なのか不思議な空気感の中で物語が展開するが、「みんなそこが分かれていて、どっちがどうと考えることが楽しい映画」と新井さんは話し、自身は「妄想だと思ったけれど“正解はない”」と見た人に“正解”を委ねる。続けて、「しっくりいかない、すっきりしないというのが嫌な人はだめかもしれないけれど、生きているって、そんなにしっくりいったり、すっきりしたりすることばかりじゃない」と語り、「不思議なことがあってもいいし、分からないことがあってもいいし、でも考えるととか想像するということが重要なので、そういう意味では“頭を使う映画”かもしれません」と慎重に言葉を選んで説明する。

 そんな映画の観賞の仕方は、「見方としては一人で行ってよし、複数で行って終わったあとに意見を交わすもよし、どっちも楽しめると思う」と切り出し、「どう見てくれても結構、『さあどうぞ!』という感じの作品」と力を込める。そして、「年齢や環境、精神状態とかもすごく大事で、そのときによって発見があるし、印象も変わる」といい、「何回見てもいい映画というのは絶対残ると思うので、すてきだと思うし、(今作も)何回も見てほしい」とメッセージを送った。映画は全国で公開中。

 <プロフィル>

 1979年1月18日生まれ、青森県出身。2002年に「青い春」で第17回高崎映画祭最優秀新人男優賞、12年の「アウトレイジ ビヨンド」では第22回東京スポーツ映画大賞男優賞を受賞。最近の主な出演作に「永遠の0」(13年)、「愛の渦」(14年)、「近キョリ恋愛」(14年)、「まほろ駅前狂騒曲」(14年)、「寄生獣 完結編」(15年)、「バクマン。」(15年)、「俳優 亀岡拓次」(16年)などがある。16年には出演した「星ガ丘ワンダーランド」が公開。「エミアビのはじまりとはじまり」「葛城事件」などの公開を控えている。

 (インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)


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