クジラ遺骸が化学合成生物群集を分散

 

熱水や湧水域にのみ生息する化学合成生物群集が、生息域を広げたのは深海に沈んだクジラの遺骸による可能性が高いことが、海洋研究開発機構を中心とする国際研究グループによって確かめられた。

化学合成生物は、光エネルギーによる光合成を直接、間接的に利用している大半の生物と異なり、海底で湧き出す硫化水素やメタンなどが酸化するときに発生するエネルギーを利用して生きている。一方、死んで海底に沈んだクジラの遺骸からも、熱水、湧水に生息する生物群集と似た生物群集が見られることが分かってきた。この結果、限られた場所である熱水、湧水の周辺でしか生きられないはずの化学合成生物が生息域を広げたのは、クジラの遺骸が仲立ちしたという「飛び石仮説」が有力視されていた。

海洋研究開発機構を中心とする研究グループは、2013年4月に有人潜水調査船「しんかい6500」によるブラジル沖サンパウロ海嶺での潜水調査で、水深4,204メートルの海底からクジラの遺骸に生息する鯨骨生物群集を発見した。これら生物群集を構成する種は属レベルで見ると、北東太平洋米カリフォルニア沖でこれまで見つかっている鯨骨生物群集とも、熱水・湧水生物群集とも似ている。北東太平洋だけでなく大西洋での初めての発見は、1989年ハワイ大学のクレイグ・スミス博士によって提唱された「飛び石仮説」が全球的な広がりを持つことを強く支持する結果だ、と研究グループは言っている。

自然死したクジラから鯨骨生物群集が最初に見つかったのは、1987年の米ロサンゼルス沖で、これまで知られていたのは7例だけだった。ほとんどが北東太平洋沖に限られているが、海洋研究開発機構が1992年に日本に近い鳥島沖(水深4,037メートル)で「しんかい6500」が見つけた例も含まれている。研究グループは、日本近海にクジラの遺骸を投入して研究することも行っており、今後調査の遅れている南半球をはじめ、世界各地で同様の実験、調査を続けたいとしている。

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