猫にマタタビを与えるときに注意すべきことを獣医師が解説

マタタビの匂いを嗅いだ猫はごろんごろんと転がり、オスメスに関係なくまるで発情期の雌猫のような行動を取り始めます。あまりにマタタビが効きすぎると「うちの猫大丈夫!?」と不安に思う飼い主さんもいらっしゃるでしょう。今回は猫にマタタビを与えるときの注意事項についてご説明します。

マタタビだけではあまり研究報告がないので、同様の興奮作用を起こす植物「キャットニップ」の情報を交えて解説します。

そもそも何でマタタビで興奮するの?

マタタビに含まれる「マタタビラクトン」と呼ばれる物質が作用していることが特定されましたが、残念ながらそれ以上のことはわかっていません。マタタビに良く似た興奮作用を起こすキャットニップ(イヌハッカ)では「ネペラクトン」という物質が作用しています。

キャットニップは猫だけでなくトラやライオンにも作用するため、当初はネコ科動物で発達しているヤコブソン器官(鋤鼻器)に作用していると考えられていました。ヤコブソン器官は第二の嗅覚ともいわれ、フェロモンを感知する器官です。

しかしその後の研究によりヤコブソン器官がない猫でも、キャットニップに対する反応は変わらないことがわかりました。そして、キャットニップは脳の匂いを認識する嗅球で感知していることが明らかになりました。キャットニップに反応する猫は50~70%で、また猫が反応するかしないかは1つの遺伝子により決められています。

残念ながら、キャットニップやマタタビが、何のためにこのような反応を引き起こすのかは解明されておりません。

動物行動学者のジョン・ブラッドショー氏はこの謎について、「なんらかの進化の偶然によって、こうした物質が猫の鼻を刺激して、通常なら決して同時に起動することがない脳の回路にスイッチを入れてしまう」と著書である Cat Sense で記述しています。キャットニップで興奮するのは進化の過程で起きたエラーのようなものかもしれません。

健康に与える影響、与えすぎは危険か?

やはり、マタタビの猫の健康に与える影響について科学的な資料はありません。ストレス解消、食欲刺激効果や爪とぎ場所のしつけなどで効果的なことがあります。他には新しい家に慣れる時などの緊張緩和のためにも使用できるでしょう。

一方、危険性についてはどうでしょうか。インターネット上では「マタタビは呼吸中枢を麻痺させて死の危険性がある」という記述も見られますが、マタタビで呼吸が止まったという科学的な報告はありませんでした。どんなものも摂取しすぎると危険ですので、各商品の用量を守り、ほどほどにマタタビを楽しみましょう。

また、ASPCA(アメリカ動物虐待防止協会)の毒性植物リストでは、嘔吐、下痢、倦怠感、陶酔、沈うつなどの症状が報告されています。さらに、キャットニップはラットで発作を起こしやすくする研究結果があることから、AVMA(アメリカ獣医療協会)は猫でもてんかん発作を持っている猫には使用しない方が良いと注意しています。またキャットニップは子宮刺激作用もあるので、妊娠中の猫も避けた方が良いでしょう。

キャットニップには中毒性はないと考えれらていますが、頻繁に与えると興味が弱くなります。具体的にどのくらいの間隔が望ましいのか記述はありませんでしたが、多くても週に1回程度が適当だと思います。また、マタタビの実や枝を与えると誤嚥してしまう可能性があるので注意しましょう。

マタタビ以外の興奮する植物や物

マタタビと類似した作用を起こす植物に、キャットニップ、キウィ(マタタビ科)などがあります。その他、消毒用塩素、お寿司のガリ、レッドシダー製シューキーパーに匂いに反応する猫もいました。猫によってどれに反応するか異なるようです。

まとめ

マタタビはアジア圏では広く知られていますが、欧米では馴染みが薄いためかあまり猫に対する作用に関する資料は見当たりませんでした。

よく似た効果を起こすキャットニップの情報を参考にすることができると思います。

基本的には安全な植物ですが、てんかんがある猫や、妊娠中の猫での使用は避けるべきでしょう。また猫の体質によっては嘔吐や下痢、倦怠感、過剰な興奮による攻撃性などが見られることもあります。これらの症状が出る場合は使用を中止しましょう。

猫の様子を観察しながら上手に使うことで、ストレス解消などに効果があると考えられます。

参考資料 ・AVMA. Crazy for catnip
・JFMS. Practical strategies for improving feline welfare.
・Cat sense The Feline Enigma Revealed. John Bradshaw
・Hart BL and Leedy MG. Analysis of the catnip reaction: mediation by olfactory system, not vomeronasal organ. Behav Neural Biol. 1985 Jul;44(1):38-46.

■著者プロフィール
山本宗伸

「獣医師。猫の病院 Syu Syu CAT Clinic で副院長を務めた後、マンハッタン猫専門病院で研修を積み今年帰国。現在2016年5月に猫専門動物病院 Tokyo Cat Specialists](http://tokyocatspecialists.jp/)開院に向けて準備中。」

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