NHKスペシャル#超少子化 - 8割が子どもを増やすための負担増に賛成

 

「NHKスペシャル #超少子化」で巻き起こった議論とは

NHKは2月20日、「私たちのこれから Our future #超少子化」と題したNHKスペシャルを放送した。番組では日本におけるこれまでの少子化対策、それに海外や地方自治体の先進的な事例を紹介。「保育園義務教育化」を主張している社会学者の古市憲寿さんなど8人の論客と一般参加者が「少子化」をテーマに議論した。

"若者の草食化"で総括できる問題ではない

番組でははじめに、日本における合計特殊出生率の変遷について紹介。第1次ベビーブーム期にあたる1949年には4.32%だった出生率が、1989年には1.57%に減少している。これは「1.57ショック」と呼ばれ、国は当時から「女性の社会進出が進む中、仕事と育児を両立できる環境が不十分」な点をその原因と分析していたが、具体的な対策は打たれなかったという。

その後、経済状況の悪化から非正規労働者が増え、結婚しない若者も増加。男性の非正規雇用が与える少子化への影響が叫ばれていたが、「大きな課題になっていかなかった」と分析されている。2005年の出生率は1.26%まで低下。このまま少子高齢化が進めば、2.3人の労働者が1人の高齢者を支える現在の状況はさらに悪化し、2040年には1.5人の労働者で1人の高齢者を支えなければならなくなってしまうと警鐘を鳴らした。

議論に参加していた67歳の一般男性は、少子化の一因とされている未婚率の高さについて「男の男らしさがなくなり、優しさばっかりで、なんとかしようという気概がない」と、その理由を分析。これに対し社会学者の古市憲寿さんは、「若者の草食化と言われがちだが、そこだけじゃない。社会的、経済的な事情で結婚・出産に踏み切れないという人は多いと思う」と主張した。

また家族社会学を専門としている中京大学の松田茂樹 教授は、「結婚や子育てはある程度の負担がかかる。しかしそれだけ負担をかけても、報いるものが少なくなってきたというのが現在。子どもを多くうみ育てたほうが、経済的にも非経済的にもよくなっていくというのがない社会であるというのが、通底する問題だと思います」と述べた。

「子育て支援税」があってもいい

次に紹介されたのが、近年めざましい出生率の回復を果たしたフランスの家族政策だ。番組によれば、子どもをうめばうむほど、その家庭の減税額は増えていき、子どもが20歳になるまでの減税額は1人で600万円、2人で1,900万円、3人では3,900万円にのぼるという。さらに出産手当、基礎手当、新学期手当などの行政による補助も豊富で、2人目以降は家族手当と呼ばれる補助も新たに追加される。

これについて、日本総研の池本美香 主任研究員は、「多く子どもがうまれても、離婚したり仕事を失ったりしても、国がお金を出してくれるという安心感がある。国民が"全ての子どもには平等に育つ権利がある"ということに合意しているからだ」と述べた。

続けて番組では、出生率2.81%を達成した岡山県奈義町の取り組みにも触れ、医療費、保育料、住宅支援など、同町の幅広い子育て支援が功を奏したと解説した。議論は、「もし国全体でこのような政策を行う場合、国民がどれだけ負担を許容できるか」というテーマに発展。松田教授は「子育て世帯だけでなく、シニアにも同じように負担していただく"子育て支援税"があってもいい。世論の合意は不可能ではないと思う」と主張した。

これに対し、政策研究大学院大学の松谷明彦 名誉教授は「国民的なコンセンサスが得られるかどうか疑問だ」と指摘。一方、古市さんは日本の社会保障のあり方を、義務教育の年齢を下げ、幼児教育を充実させる「事前配分」に変えるべきだと提案した。

「事前配分」とは、格差がうまれる前の子どものうちに、国民から集めたお金やサービスを配分しようという考え方。現在の政府の施策は、低所得者や生活保護者に対しての補助など、大人になってからうまれた格差を埋めるための支援が中心だ。古市さんによれば、「事前配分の方が社会にとってお得」で、例えばアメリカで行われた研究では、貧困家庭の子どもに教育を施すと、将来一定以上の収入を得る人が増え、より多くの税金が納められることが証明されているという。

このあと「少子化対策に新たな負担はあり? なし?」というテーマで、視聴者を対象としたデジタル放送上の投票が行われたが、「あり」と回答した人は82.6%にのぼった。

仕事、家事、出産育児、介護を全部やるのは無理

番組のタイトルにハッシュタグが付けられていることもあり、Twitter上ではさまざまな意見が寄せられた。「子どもは家族が育てるものではなく国家で育てるもの」「高齢者にわたっているお金を子育て世帯にまわすべき」「妊娠、出産、育児の費用がかかりすぎでそれを補う施策は絶対に必要」といったように、子どもに対する施策により多くの税金を使ってもいいのでは、という声が多かった。

加えて「現金給付ではなくて、教育の無償化をすべき」「共働き前提の社会にするなら保育園を増やすべき」など、その使い道に対しても議論があった。

さらに子育て中の親からは、「女性の社会進出と同じくらい男性が家庭進出すればいい」「社会進出、家事、出産・育児、親の介護を女性に全部やれというのは無理」「保育園にも入れず、夫も育児に参加できず、仕事しながら子育てなんてできない」といったような、現状の苦しさを訴える声もあがった。

番組の最後では論客の多くが、"育児を社会で支えていく"という考えの大切さを訴えていた。少子化対策は待ったなし。国や社会全体の本気度が試されているようだ。

※写真と本文は関係ありません

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