【レポート】

日本語を覚えた「IBM Watson」が正式展開、MUFGはLINEで活用

 

日本アイ・ビー・エム(日本IBM)とソフトバンクは2月19日、コグニティブ・コンピューティング「IBM Watson」を活用したサービスの日本語版提供を発表した。

コグニティブ・コンピューティングのIBM Watsonは、理解や推論、学習を行い、認知・気付き(コグニティブ)を利用者へ提供する。今回のサービス提供はIBMとソフトバンクによる共同展開の昨年2月の発表に基づくもので、SaaS型によるAPIの提供で顧客企業はWatsonを活用できるようになる。

サービス開始当初は、次の6種類のAPIを日本語で提供する。

  • Natural Language Classifier(自然言語分類)
  • Dialog(対話)
  • Retrieve and Rank(検索およびランク付け)
  • Document Conversion(文書変換)
  • Speech to Text(音声認識)
  • Text to Speech(音声合成)

ソフトバンクは、これらAPIの日本語化について、日本IBMと協力。今後は、販売体制など、「パイプラインを共にして」(日本IBM 代表取締役社長 ポール 与那嶺氏)、営業先の重複なく、Watsonの拡販を進めていく。料金体系には従量課金制を採用し、ソフトバンクをマスターディストリビューターとして、その他のSIerと協力して、顧客企業に最適化したWatsonの利用機会の拡大を進める。

Watsonは「過去最高の引き合い」

記者会見には、与那嶺氏のほか、ソフトバンク 代表取締役社長 兼 CEOの宮内 謙氏、米IBM Watson ビジネス開発担当でシニア・バイスプレジデントのマイク・ローディン氏、日本IBM 執行役員 ワトソン事業部長の 吉崎 敏文氏、ソフトバンク 専務取締役 法人事業統括 統括担当の榛葉 淳氏らが登壇した。

日本IBM 代表取締役社長 ポール 与那嶺氏

米IBM Watson ビジネス開発担当 シニア・バイスプレジデント マイク・ローディン氏

ソフトバンク 代表取締役社長 兼 CEO 宮内 謙氏

ソフトバンクとIBMは1年をかけて協力し、日本語化と、試験的な顧客企業へのシステム構築を進めてきた。

契約済みの企業はすでに10数社に上り、2年前に英語版がスタートして以来「現在は世界100以上の企業が導入している」(ローディン氏)という状況と比較しても、上々のスタートと言える。宮内氏によれば、問い合わせ自体も150社を超えているとのことで「長年IT業界にいるが、これほど引き合いが来ているのは正直初めて。非常に期待している」と、興奮を隠せない様子だ。

IBMは、Watsonについて、人工知能とは異なる「コグニティブ・コンピューティング」とうたっているが、具体的に何ができるのだろうか。発表には、すでに両社との取り組みを開始しているカラフル・ボードとFiNC、第一三共、フォーラムエンジニアリング、三菱東京UFJ銀行の5社が登壇し、自社の取り組みを披露した。

例えば第一三共は、新薬開発にWatsonを活用することを表明。海外子会社などはすでにWatsonを活用しているとのことで、「日本語版が出たことで、ようやく本社でも利用できる」としている。新薬開発には、1つの製品に1000億円を超える開発コストがかかることもあり、開発開始から患者が一般的に利用できるまで10年のスケジュールを要する。

「導入の目的は、医薬品の研究開発プロセスの効率化。現在は、疾患に関する分子レベルの情報があっても、100万個の化合物からスクリーニングをしなければならない。これをWatsonの手助けによって、研究者の叡智や感性、勘に加えて、テーマ選定とプロセスの短縮を図りたい」(第一三共 執行役員 研究開発本部長 兼 研究開発企画部長 赤羽 浩一氏)

LINEのトーク例

ただ、会場の温度感からすると、すべての事例が受け入れられたとは言いがたい。例えば、三菱東京UFJ銀行は同日よりLINEの自社アカウント内でWatsonを活用し、ユーザーが疑問に感じた銀行への質問をメッセージ送信することで、同社WebサイトのFAQを自動的に引っ張ってくる機能を用意した。従来の検索機能とは異なり、友達に尋ねる感覚で質問を送るだけという機能は、Natural Language Classifier(自然言語分類)や、Retrieve and Rank(検索およびランク付け)のAPIを活用していると見られる。ただ、三菱東京UFJ銀行のWebサイトから収集したデータベース作成が甘いのか、自然言語処理がうまく行っていないのか、「最寄りのATMは?」といった質問でも、満足する回答は得られなかった。

企業がWatsonを「何のために活用するか」をIBMやソフトバンクが精査してシステムに学習させるまで、およそ3カ月を要するといわれており、もしかするとランディングするための期間が短かったのかもしれない。そもそも、Watsonは"学習できる"システムであるため、多くのユーザーがさまざまな質問をぶつけ続けることで、その返答も次第に洗練されていくことだろう。

将来的には、Watsonと連携できるPepperの導入も視野に入れる

また、ソフトバンクもすでに営業部隊への営業支援システム「SoftBank BRAIN」を開発しており、顧客の売上高やビジネス状況から、過去の提案書で最適なものをレコメンドしたり、社内システムと連携したりといったことも視野に未来図を描いている。また、代表取締役社長の宮内氏は、ソフトバンク独自の付加価値として、すでに発表しているPepperとの連携を挙げつつ「私たちは、スマートフォンを一生懸命売ってきた。ただ、スマートフォンをより使いやすくするためには、Watsonのようなシステムが必要。ITは膨大な情報量を取り扱うことで進化してきたが、今は情報量が膨大すぎて、どこに何があるのかわからない状況。これをWatsonの支援によって、改善し、最適なものを提案していきたい」(宮内氏)としていた。

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