劇作家・つかこうへい七回忌特別公演 新作未発表戯曲『引退屋リリー』(2月18日~3月7日/東京・新宿 紀伊國屋ホール)の公開稽古が18日、都内で行われ、キャストの馬場徹 祐真キキらが出席した。

左から、山崎銀之丞、町田慎吾、祐真キキ、馬場徹、宮崎秋人、鈴木裕樹、吉田智則

『引退屋リリー』は、つかの未発表作で、1989年パルコ劇場の幕末純情伝上演時に、「予告編」として存在を明らかにされた。何度もオーディションを繰り返したが、正式に上演されることはなかったという。今回、主役を「つかこうへい最後の愛弟子」と言われる馬場徹が演じ、ヒロインはアメリカの人気テレビドラマシリーズ「HEROES REBORN(ヒーローズ・リボーン)」にただ一人日本人としてレギュラー出演中の祐真(すけざね)キキが務める。自殺の名所と言われる島で、刑事(馬場)から父親の殺人容疑をかけられたヒロイン(祐真)が、美空ひばりとマッカーサーの娘という荒唐無稽な設定でドキュメンタリー映画の主役として撮影されるうちに、島の秘密が明らかになっていくというストーリー。馬場と祐真のダンスシーンやキスシーンなども盛り込まれている。

馬場、祐真のほかにも、舞台『弱虫ペダル』などで人気の若手俳優・宮崎秋人、多くの舞台に出演しダンスのプロでもある町田慎吾、ミュージカルや特撮のなど幅広く活躍する鈴木裕樹、つかこうへい劇団で秘密兵器と言われる吉田智則、NHK連続テレビ小説『あさが来た』出演で話題となった山崎銀之丞ら実力派がそろう。

公開稽古後に行われた記者会見では、つかこうへいについての質問が多く寄せられた。稽古でセリフを飛ばしてしまった馬場は、「さっきのゲネプロを見ていたらすごく怒られたんだろうなと思いました(笑)」と苦笑い。現在アメリカで俳優活動をしており、日本語の長セリフに苦労しているという祐真は「(ヒロインのオファーは)本当にうれしかったです。私は舞台をやったことがなかったのですが、すごく勉強になるということで。天国にいるつかさんにも殺されないようにというか、喜んでいただけるように頑張りたいなと思いました」と、つか作品に挑む喜びを明かした。

山崎が「色々な資料は残っているんですけども、それをつなぎあわせる作業に、とても難しいところがありました」と語る通り、故・つかこうへいの未発表作品を初めて公演にするということは、出演者にもプレッシャーを与えていた様子。「ふだんから緊張しいな人間なんですけど、つかこうへいさんの未発表作品ということでプレッシャーを感じています」(町田)、「念願のつかこうへいさんの作品にはじめて挑戦できるということで、エネルギーの消耗が激しいなというのをひしひしと実感しています」(宮崎)、「僕がつかこうへいさんの作品に参加させていただくのは初めてですけど、初めてやる人間がやる意味というか、ある種、無責任に思いっきりやることが責任かもしれないなと」(鈴木)と、若手の役者陣も口々に緊張を語った。

また、馬場はつかに対して「本当に人生を変えていただいたので、少ないかもしれないですけど、恩返しでもできたらいいなというのが一番ですね」と思いをはせ、「この戯曲がこれから何十年も先、色々な人につながってくれるのが一番かなと思います」としみじみ語っていた。