理研、「SACLA」でマルチビームライン運転に成功 - 利用機会拡大に期待

 

理化学研究所(理研)は2月17日、X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」において2本のビームラインで同時にX線レーザーを発振させることに成功したと発表した。

同成果は理研放射光科学総合研究センター先端ビームチームの原徹 チームリーダーらの研究チームによるもので2月16日に米国科学誌「Physical Review Accelerators and Beams」オンライン版に掲載された。

「SACLA」は理研と高輝度光科学研究センターが共同で建設した日本初のXFEL施設。XFELはX線領域のパルスレーザーで、半導体や気体を発振媒体とする従来のレーザーと異なり、真空中で高速で移動する電子ビームを媒体とするため、原理的な波長の制限がない。従来の放射光源と比較して10億倍もの高輝度のX線がフェムト秒(1000兆分の1秒)の時間幅を持つパルス光として出射され、高い輝度を活かして、ナノメートルサイズの小さな結晶を用いたタンパク質の原子レベル分解能での構造解析や、X線領域の非線形光学現象の解明などのために用いられている。

しかし、直線形の線形加速器を使うXFEL施設では、加速した電子ビームを通常は1本のビームラインに送るため、複数の実験を同時に行うことができない。そのため、利用機会の拡大には複数ビームラインの同時稼働が必要とされていた。

今回の研究では、線型加速器の終端に高精度キッカー電磁石を設置することで、電子ビームをパルス毎に2本のビームラインへ振り分けることを目指し、「1m先で見たときビームの位置が1000万分の1メートルしかずれない」高い精度で電子ビームパルスを振り分けることが可能となった。

ただ、同じエネルギーの電子ビームパルスをただ振り分けるだけでは、2本のビームラインのレーザー波長を独立に大きく変えることができず、実験で大きな制約となってしまう。そのため、線型加速器の一部の加速空洞の繰り返し周波数を変えることで電子ビームパルスごとに異なるエネルギーまで加速させる、マルチエネルギー運転の技術を開発することで、2本のビームラインそれぞれのX線レーザーの波長を、広範囲にわたって独立に制御することに成功した。

今回の成果では、30Hzの電子ビームパルスを2本のビームラインに交互に送ることで、同時に2本のビームラインで安定なレーザー発振を達成し、ビームライン間のレーザー波長も4~10keVの広い範囲で変えることが可能であることを実証したが、現行のマルチビームライン運転では、電子ビーム輸送路におけるコヒーレント放射の影響を抑制するため、電子ビームパルスのピーク電流を低減する必要があり、レーザー出力が制限されている。同研究グループは今後、強いレーザー出力を要する実験がマルチビームライン運転下で実施できるよう、電子ビーム輸送路におけるビーム光学系の改善によって、レーザー出力の向上を図るとしている。

SACLAの光源棟内部の様子。



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