認可保育所の4月入園の可否が通知される時期になった。無事に入所が決まって安堵する親がいる一方、「不承諾通知」を受けて落胆し、先行きへの不安を募らせる親もいる。そんな親たちの情報交換の場を作るため、「保育園増やし隊@武蔵野」が2月7日、東京都武蔵野市内で「保活交流会」を開催。約40人が集まった。

「保育園増やし隊@武蔵野」は、保育園増設を求めて自治体に異議申し立てを行う「保育園一揆」の流れを受けて結成されたもの。「保育園一揆」を起こした「保育園ふやし隊@杉並」と同様に、保育状況の調査や自治体に対しての要望を行っている。今回開かれた交流会で、親たちからはどんな声があがったのか、取材した。

東京都武蔵野市で開かれた「保活交流会」の様子

住みたい街、でも保育園に入れない……

「現時点でどこにも決まっていなくて困っている人はいますか」。交流会の開始直後、司会役のスタッフが問いかけると会場のあちこちから手が挙がった。「認可も認証も、申し込んだところは全部ダメだった。また新しく探さないといけない」「4月から職場復帰したいのに先が見えない。職場も後任を探すのでいつまで待ってくれるか……」「認証は他市も含めて30園申し込んだけど全部ダメ。育休の延長もできないので夫婦どちらかが仕事を辞めなければならない」――。集まった保護者からはそんな切実な声が次々と飛び出した。

住みたい街ランキング1位として名高い吉祥寺を有し、子育て世帯にも人気が高い武蔵野市。だが、必ずしも子育て世帯に優しい街とは言えず、待機児童数は2012年が120人、2013年181人、2014年208人と一昨年まで増加傾向にあった。そのため市は2012年以降、認可保育所を4園、認定子ども園を1園、認証保育所を6園、小規模保育等を7園開設(今春開園予定等も含む)。一方で保育の弾力化も進めて受け入れ数を増やし、2015年には待機児童は127人に減った。それでも需要の増加に受け入れが追いつかない状況が続く。

これに対し、保護者からは不満の声があがる一方で、弾力化を不安視する見方もある。市内のある認可保育園では3歳児クラスの受け入れ人数を一気に4人増加。子どもを園に通わせる保護者は「そのために園児が慣れ親しんだ食堂も無くなり、詰め込むのも限界にきている。施設自体をもっと増やしてほしい」と訴える。食堂をつぶしたり、弾力化したりして受け入れ数を増やす対策は、一時的にせよ保育の質を下げて対応するというもの。理想を言えば、質を下げずに全員を受け入れる体制を整えてほしいというのが親の当然の願いだ。

3歳の壁「入れてもまだ不安……」

また、小規模保育室を増やして、待機児童を吸収するやり方は別の問題も含んでいる。いわゆる「3歳の壁」だ。市が開設するグループ保育室や家庭的保育室(保育ママ)はいずれも0~2歳までが対象。認可保育所や認証保育所の一部でも2歳までの受け入れだったり、規定はなくても3歳以上の児童数が極端に少なくなったりするところもある。その場合、児童が3歳児クラスに上がる際に再び新たな預け先を探さなくてはならないのだ。

4歳の子どもを認証保育所に通わせているある母親は、「4月から同い年の子がゼロになるため認可に申し込んだが不承諾で、幼稚園に通うことを選ばざるを得ない。今後仕事と両立できるか分からない」と言う。また別の母親も「ひとまず2歳まで通えるとホッとしても、3歳のときにまた保育園に通える保証がないので、いつまでも不安がつきまとう」と話した。

その他には、「いままで抽選で決まった認証が認可化されていくと、入所の優先ポイントが低い家庭は預け先がなくなる」「需要予測が実態とかけ離れているので修正すべき」「学童保育の情報公開もしてほしい」などの意見もあった。グループのスタッフは、「不承諾通知を受けた人はぜひ異議申し立てをして、文書で表明することが大事」と勧めた上で、「認証保育所は3月に空きが出たりするので諦めずに電話してみてほしい」と呼びかけた。

今回紹介したのは武蔵野市のケースだが、これらの保護者の声は多くの自治体にそのまま当てはまる現状でもある。少子、労働力不足の社会にあって、子を産み育て、かつ働く親は貴重な存在のはず。その親たちがいったいいつまで「不承諾通知」におびえ続けなければならないのか。一刻も早い解決を願う。