若手研究者に安定かつ自立して挑戦的研究を推進できる環境を与える「卓越研究員」事業が動き出した。文部科学省は5日、公募要領を公表し、まず卓越研究員を受け入れたい研究機関からポストを募集するための説明会を15日に都内で開くことを明らかにした。

卓越研究員は、昨年6月に閣議決定された成長戦略「『日本再興戦略』改訂2015」で打ち出された若手研究人材育成制度。年数を限られた任期付きポストが増え、独創的な研究に挑戦しにくくなっているといわれる若手研究者たちの支援が狙いだ。研究の場としては、大学、高専、国立研究開発法人、公設試験研究機関、企業など全国の産学官の研究機関を対象にしている。

公表された公募要領によると、卓越研究員の受け入れを希望する研究機関が提示したポストのうち、要件を満たしたものを文部科学省がホームページで公表する。並行して、若手研究者を対象に卓越研究員の公募を実施し、中立的な公的機関によるピアレビューを経て、文部科学省が候補者を決定する。その後、各研究機関と候補者との調整の結果、新規雇用が決定されると、文部科学省が一定期間、研究費などを支援する、となっている。各研究機関が、雇用を希望する卓越研究員候補を推薦することも可能だ。

研究分野は自然科学に限らず人文・社会科学も含む全分野を対象にしている。テニュアトラック制(任期付きだが、任期終了前に公正で透明性の高い安定的な雇用に就ける審査が設けられている)に準じた雇用形態のほか、上位職(教授相当)の全員に再任回数の限度のある任期制を適用している機関には同様の雇用も可能とし、さらには任期なしも認めるなど、雇用形態には大きな幅を設けている。

卓越研究員として申請できる若手研究者は、博士号所有者と博士課程満期退学者で、年齢は2017年4月1日時点で40歳未満。加えて、博士の学位を取得後または博士課程の満期退学後(社会人学生であった場合は、学位取得前を含む)に研究機関における研究経験を有する者、となっている。外国人も申請でき、2016年度は、150人程度を見込んでいる。

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