トヨタ自動車とダイハツ工業は、株式交換によるダイハツの完全子会社化について合意し、このほど共同記者会見を行った。トヨタ自動車代表取締役社長の豊田章男氏、ダイハツ工業取締役社長の三井正則氏が登壇し、今後のダイハツブランドの展望や、トヨタ・ダイハツ両社の戦略について語った。

トヨタ・ダイハツ共同記者会見がこのほど行われた

トヨタとダイハツは約50年前から提携関係にあり、2004年から共同開発も開始。さらにOEM供給など関係を深めてきた。完全子会社化に至った経緯について、豊田氏は「より強固な関係となって、両ブランドで一層『もっといいクルマづくり』を進めたい」と、トヨタ側から提案したこと、ダイハツの三井氏は当初、相当に驚いたことを明かした。

三井氏はこの提案を受けた理由について、「『グローバルな事業展開力』『環境/安全規制への対応』『電動化や自動運転』『つながる技術』など、社会的ニーズ、お客様ニーズに応える次世代技術への対応の必要性が待ったなし」であるのに、自社のみの企業規模では対応できないとした。自動車業界ではかねてから、ますます厳しくなる環境対策・安全対策を小規模な自動車メーカーが独自に対応するのは難しいとされているが、まさにその定説通りの決断といえる。

三井氏は続けて、今後の協業の具体策として、「小型車戦略」「技術戦略」「事業戦略」の3点を挙げた。従来のOEMモデルよりも各ブランドの差別化を図る一方、小型車や軽自動車に次世代技術を導入しやすいことや、トヨタ・ダイハツ双方のものづくりの基盤を相互に活用することで、スピードや高率が高まることをメリットとしている。

トヨタ自動車代表取締役社長の豊田章男氏

ダイハツ工業取締役社長の三井正則氏

一方、豊田氏は、「TNGAの取組みを進めるにあたって、改めて小さいクルマづくりの難しさを痛感しました。地球環境問題の高まり、新興国市場の拡大などから、従来以上に小型車の重要性は増しています」と述べ、ダイハツの小型車開発のノウハウとともに、トヨタが比較的不得手とする新興国市場にダイハツが強いことも子会社化の理由に挙げた。

豊田章男氏が挙げた"好きなダイハツ車"とは?

記者会見後半の質疑応答では、ダイハツブランドが消滅してしまうのではないかとの懸念に対して両社社長が強く否定し、三井氏はBMWとMINIの例を挙げて、ダイハツは世界に通用するグローバルブランドをめざすとした。現在のMINIはBMWのいちブランドだが、小型車に特化していながら、プレミアムブランドとしての地位を確たるものとしており、ブランド戦略の成功例の最たるものといえる。

豊田氏には、トヨタが自社開発にこだわる自前主義を掲げながら、小型車開発をダイハツに委ねる矛盾を突く質問があった。これについて豊田氏は、トヨタは自前主義を捨てておらず、小型車開発においてもその技術があるとの自負があるとし、その上で、現在のトヨタの最大のスローガンである「もっといいクルマを作ろうよ」ということを考えたとき、トヨタのみで小型車を開発する場合と、ダイハツの力を取り入れた場合とでは「違った景色が見えてくる」と述べた。

その後、豊田氏へダイハツのラインアップで好きなモデルは何かと質問が出ると、「『コペン』という答えを期待しているかもしれないが、そうではなく『ミラ イース』だ」と明言。「ミラ イース」には脅威すら感じたという。豊田氏は軽自動車が世間で認知されるきっかけとなったモデルとしても「ミラ イース」を挙げており、このモデルによってダイハツの技術力を再認識したことをうかがわせた。