急成長を遂げた日本…激戦の連続で得た「勝ちグセ」を手にリオ五輪で飛躍へ

 

韓国を破り、AFC U-23選手権カタール2016を制したU-23日本代表 [写真]=Getty Images

 延長戦までもつれ込んだイランとの激戦を3-0で制して準決勝進出を決めた時、この先にそれ以上劇的な試合が待っているとは思わなかった。

 それ以上に劇的な試合となったイラクとの準決勝で原川力(川崎フロンターレ)が後半アディショナルタイムに決勝弾を叩き込んだ時、これほどドラマティックで、刺激的なゲームはしばらくお目にかかれないだろうと思った。

 だが、わずか4日後、それを目の当たりにすることになった。

 韓国との決勝で目にしたのは、それまでの2試合以上にドラマティックで奇跡的で、浅野拓磨(サンフレッチェ広島)がこの日2点目を決めたあとの約10分間は、夢でも見ているかのような居心地だった。

 これまでにも触れたことがあるように、手倉森ジャパンは2014年1月に立ち上げられて以来、公式戦で三度(イラクに二度、韓国に一度)敗れてきたが、そのすべてで先制点を奪われており、先制された試合で逆転勝ちした経験はなかった。

 今大会においても、これまでの5試合はすべて先制点を奪っており、イラクとの準決勝では追いつかれたものの、基本的には粘り強く戦いながら、相手のスキを突いて先制する“先行逃げ切り型”のチームだった。

 ところが、決勝では韓国に先制点どころか、2点もリードを許してしまった。

 だが、最後の最後に与えられた大きな試練を、手倉森ジャパンはものの見事にクリアしてしまう。

 それも準決勝までの5試合で12ゴール、9人のスコアラーを生んでいたにもかかわらず、唯一ゴールを奪えていなかった昨季のJリーグベストヤングプレーヤーを受賞した浅野が、まるでこの日のためにあえてゴールを奪って来なかったかのように、強烈で鮮烈な2ゴールを沈めてみせた。

 こんなに神がかっている日本代表を、これまでに見たことがない。

 今大会は手倉森誠監督の選手起用、采配がことごとく当たって勝ち上がってきたが、この試合では指揮官も「私の責任だった」と認めたように、采配が裏目に出たシーンがあった。原川を投入して後半立ち上がりから4-3-3に変更した場面だ。それによって重心が後ろへ傾いてしまい、韓国に攻勢に出られるスキを与え、後半開始早々に痛恨と思われた2点目を献上してしまう。

 ところが、選手たちに焦りはなかった。

「スカウティングで韓国が後半落ちてくることは分かっていました。チームとしては負ける気がしないような、そういう一体感があった」と左サイドバックの山中亮輔(柏レイソル)が言えば、「前半よりは後半のほうが相手に勢いがなかったし、足を攣っている選手もいたので、『(スタミナが)落ちてきたな』と感じていました」と右サイドバックの室屋成(明治大)も言う。

 67分に浅野のゴールで反撃の狼煙を上げると、わずか1分後には矢島慎也(ファジアーノ岡山)が同点ゴール。さらに81分には再び浅野がゴールを決めてゲームをひっくり返した。選手たちが指揮官のミスをカバーしてみせたのだ。1ゴール1アシストの矢島が胸を張る。

「先制されて、見ている人たちも『ダメかな……』って思ったかもしれませんよね。ここからひっくり返すのはなかなかできないことだと思うし、内容が悪くても勝ち切ってしまう、勝ちグセみたいなものがこの大会でついてきたんじゃないかと思います」

 こうなると、俄然、興味が注がれるのが、リオデジャネイロ・オリンピック本大会の戦いだ。

 これまで日本はアジアに対しては主導権を握って攻撃的にゲームを進められても、世界が相手となると押し込まれる時間が長くなり、その“ダブルスタンダード”に苦しめられてきた。

 だが、手倉森ジャパンはアジアでもいわば弱者の戦い方――守備から試合に入り、粘り強く戦いながらカウンターや速攻、セットプレーから勝機をうかがう――で勝ち抜いた。

 このスタイルを磨いた延長線上に、リオ五輪での戦いがある。もちろん「内容面、特に攻撃の部分で課題が見えた大会だったので、これからが大事になる」と遠藤航(浦和レッズ)も指摘していたように、プレーの精度をさらに高める必要があるし、ボールをもっと保持できるようにならなければ、勝機すらうかがえなくなってしまう。

 だが、今回のアジア予選から戦い方を180度変える必要のない手倉森ジャパンが、リオ五輪に向けてチームをどう仕上げていくのかが興味深い。

 個人的にはオーバーエイジは起用しないほうがいいと思っている。

 予選を勝ち抜いたこのチームで戦わせたい、なんてセンチメンタルなことを言うつもりはない。そうではなく、これまで国際経験の少なかった選手たちがアジア最終予選で一試合一試合勝ち抜きながら、猛スピードで成長を遂げていく姿を目の当たりにした。だからこそ、リオ五輪でもすでに日本代表や欧州でのプレー経験のあるオーバーエイジにプレーさせるのではなく、一人でも多くの若い選手たちに世界との戦いを経験させ、成長させる――それが、日本サッカーの未来につながっていくのではないかと思う。

文=飯尾篤史


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