何もしなくても猫に好かれる人もいれば、何もしていないのに猫に嫌われる人もいます。「動物は本能的に良い人と悪い人を見分ける」などと言われることもあり、理由もなく動物に嫌われショックを受けた方も多いでしょう。

一体何を基準に猫は人間を判断しているのでしょうか。猫に好かれるには猫の気持ちになって考えることがヒントになりそうです。今回紹介するテクニックを使って家の猫だけでなく友達の家の猫、外猫からも好かれる人を目指しましょう。

猫の距離感を知る

猫には4つの距離感があります。一番近いのが個人的距離です。これは一緒に寝るぐらい仲が良い猫や、飼い主さんのみ侵入が許される範囲です。それより少し広い範囲が社会的距離です。ここは顔見知りの猫、または人間が入っても大丈夫な範囲です。

その次が臨界距離と呼ばれます。これは馴染みのない動物(人間を含む)が侵入すると、自己防衛(威嚇、攻撃)をする範囲です。そして4番目が逃走距離です。馴染みのない動物が接近したら逃げ出す距離になります。

猫の逃走距離は2mまたはそれ以上です。つまりあなたが顔馴染みでない猫と会った時は2m以内には自分から近づかない方が良いと言えます。

静かな人の方が圧倒的に好かれる

当たり前のことかもしれませんが、実際に猫に会うとあまりの可愛いさに興奮し、騒がしくしてしまう人が多いのではないでしょうか。また、思わず抱きしめてしまうなど、猫が嫌がることをしてしまうかもしれません。

猫は歩くときにも殆ど音を立てない静かな動物です。自分も猫になった気持ちで、ドタドタ歩くのはやめましょう。話しかける時も興奮を抑えて静かに話しかけましょう。

香水は禁止!

猫は、犬ほどではありませんが人間よりははるかに鼻が利きます。香水の匂いは猫に強すぎるでしょう。特に柑橘系の匂い、レモンやシトラスを嫌がるので注意しましょう。

猫が怖がらないように気をつける

猫に嫌われる人は、気がつかないうちに猫を威嚇しているかもしれません。大柄な人はそれだけで怖がられてしまうので、腰を落とすか、床に座ってコミュニケーションをとりましょう。

猫の写真で有名な動物写真家の岩合光昭さんは、撮影をするときはほふく前進のように猫に近づいています。また触るときには、大きな手を広げると怖がりますので、握手するような手の形でタッチしましょう。

また、話しかける時は小さく高い声で話しかけましょう。猫は威嚇するときに「ウゥ~」と唸ります。基本的に動物の体重と声の高さは反比例し、大きな動物ほど低い声を出すので少しで自分を大きく見せるようとしてるためです。よって、声をかける時は小さい声で、さらに少し高い方が猫にとって安心と言えるでしょう。

猫のボディランゲージを知る

目を広げて猫をじっと正面から見る方がいますが、これは猫の世界では威嚇になってしまいます。興奮状態の猫は瞳孔がまん丸になって、相手から目を離しません。特に目が大きい人は気をつけましょう。

では猫がリラックスしている時、猫の目はどうなっているのでしょうか? 猫は、リラックスすると目を細めます。また、猫のまばたきは相手を信頼しているというメッセージなります。

しっぽにも注意を払いましょう。しっぽを上げて近づいてくるのは、友好を示すボディランゲージです。さすがに人間は真似できませんが、このサインを出している猫は、人間に対してもフレンドリーな猫とわかります。猫に嫌われる人も、しっぽを上げている猫となら仲良くできる可能性が高いでしょう。

反対に瞳孔が広がって目がまん丸、耳が後ろを向いている猫に好かれるのは大変難しいです。そういったサインを出している間には近寄らない方が無難です。

猫からのチェック「キャットスキャン」を受ける

初対面の時に「危険な動物ではないか」を猫が評価することをキャットスキャンといいます。猫が近づいてきたらキャットスキャンがしやすいように手を猫の鼻先に近づけて見てください。匂いを嗅いだり、猫によっては頭をこすりつけてくることもあるでしょう。

キャットスキャンが終わったらそのまま首や耳の後ろを撫でてあげましょう。これは私も診察で使っているテクニックです。この手順を経ることで初対面でも猫の不安を和らげることができます。

猫のペースに合わせる

猫のペースに合わせることも大切です。パソコンや勉強などの作業に夢中になっている時に、猫が画面の前に座り込んで邪魔することがあります。猫からすると暇そうに見えるのか、人間が集中している時ほどこの行動が見られます。これは「構ってほしい」とアピールしているので、すぐにどけるのではなく、しばらく一緒にいてあげましょう。

ご飯係を買って出る

そして、猫も現金なもので、ご飯をくれる人に一番懐きます。上記のことに気をつけているのに「家族の中でなぜか私だけ嫌われている……」という場合はご飯係を率先して行うと猫の態度が変わるかもしれません。

まとめ

今回紹介したコツを実践すれば少なくとも嫌われることはないでしょう。むしろ猫嫌いの方が猫に好かれることがあります。これは、積極的に干渉されることを嫌う猫の性格をまさに表しています。私が昔飼っていた猫も家族で一番の猫嫌いである父親の部屋で寝ている姿がしばしば見られました。

「猫嫌いを装う」のも意外と良い方法かもしれません、猫好きにとってはそれが一番難しいことですが。

■著者プロフィール
山本宗伸
獣医師。Syu Syu CAT Clinicで副院長を務め、現在マンハッタン猫専門病院で研修中。2016年春、猫の病院 Tokyo Cat Specialistsを開院予定。猫に関する謎を掘り下げるブログnekopediaも時々更新。