ニールセンが1月26日に発表した調査結果によると、2015年11月におけるVOD(ビデオ・オンデマンド)の利用者数は、テレビ局系・定額制のいずれでもPCからの利用者をスマートフォンからの利用者が大きく上回ったという。

同調査は、同社のスマートフォン視聴率情報である「Nielsen Mobile NetView」(ニールセン・モバイル・ネットビュー)及び、PC版インターネット視聴率情報である「Nielsen NetView」(ニールセン・ネットビュー)のデータを基に分析したもの。

2015年11月のVODサービスの利用者数を見ると、テレビ局系のVODはPCからが139万人、スマートフォンからが532万人であり、在京民放5社が連携したVODである「TVer」(ティーバー)は、PCからが57万人、スマートフォンからが251万人の利用者があった。

なお、ここで言うテレビ局系VODとは、「NHKオンデマンド」「日テレオンデマンド」「テレ朝動画」「TBSオンデマンド」「テレビ東京オンデマンド」「フジテレビオンデマンド」「TVer」の各サービスを指す。

PCとスマートフォンからのVODサービス利用者数(2015年11月)

定額制のVOD(SVOD: Subscription based Video On Demand)のうち利用者数上位5サービスの集計では、PCからが269万人、スマートフォンからが781万人の利用者だった。 テレビ局系・定額制共に、スマートフォンからの利用者数がPCを大きく上回っている。

スマートフォンからの各VODの利用者数を2014年11月と比較したところ、テレビ局系のVODは全体の利用者数が約10倍に増加したが、定額制VODでは全体の利用者数に大きな変化は見られなかった。

月間利用時間が5分以上の利用者数の推移に目を転じると、テレビ局系のVODでは117万人増加、SVODでは67万人増加した。平均利用時間では、テレビ局系は2014年11月の2分から2015年11月には12分に、定額制VODでは5分から31分に増加している。

スマートフォンからの各VOD利用者数比較(2014年11月と2015年11月)

スマートフォンからの定額制VOD利用に関して、利用者数上位3アプリの重複利用状況を見ると、総利用者数201万人のうち2つ以上のアプリを利用している人は5%に過ぎず、残りの95%は1つのアプリだけを利用している。

スマートフォンからの定額制VOD利用者数上位3アプリの重複利用状況(2015年11月)

同社シニアアナリストの高木史朗氏は、まずスマートフォンからのVOD利用に関して「TVerがサービスを開始したことで、テレビ局系のVODは、全体の利用者数が大きく拡大していた点は注目すべき」としている。「テレビ局系のVOD、SVOD共に利用時間も大幅に増加しており、徐々に日本市場においてもサービスの利用が浸透してきている様子がうかがえました」とする一方で、「NetflixやAmazonプライム・ビデオなどが昨年サービスを開始したものの、SVODでは利用者数は増加していません」と指摘する。また、PCやスマートフォン以外の機器からの利用も含め、「SVOD自体に関心のある人がどの程度増えていくのか、注視していく必要があります。その際、広告モデルのサービスと定額制のサービスの料金形態に対する消費者の意識にも注意が必要です」と指摘している。

さらに、「アメリカでは、SVOD利用者のうち2サービス以上利用している人が30%以上を占めています」と、重複利用者が少ない日本の状況と比較した上で、アメリカでは「競合との差別化のために、各社がオリジナルコンテンツの制作に力を入れていることが、重複利用を促進していると考えられます」という。「今後日本市場においても、オリジナルコンテンツが増えていくことで、複数サービスの加入が増えていく可能性はあります。動画視聴サービスの運営企業にとっては、市場全体の利用者数に加えて、複数サービスの重複利用状況も把握していくことが重要です」と提言する。