(左から)吉田尚記、小林ゆう、サンキュータツオ。

アニメ「昭和元禄落語心中」とコラボした落語イベント「声優落語天狗連 supported by 昭和元禄落語心中」が、去る1月23日に東京・神田明神の明神会館にて行われた。

年間100本近くのアニメイベント司会を務め、落語研究会出身のニッポン放送アナウンサー・吉田尚記が、「どうしてもやりたい」という強い思いから企画した本イベント。開始時刻になると劇中で流れるジャズ調のBGMとともに紋付袴姿の吉田が現れ、ひとしきりアニメ「昭和元禄落語心中」の素晴らしさを語る。

続いて小夏役を演じる小林ゆうが観客に手を振りながら入場。落語CD「モエオチ!」をリリースしたり定期的に独演会を開いたりと、落語好きとして知られる小林は、会場に設けられた落語を演じる高座の座布団に触れ「いい肌触りですね」と開口一番語り、観客を笑わせた。そのまま吉田とトークを繰り広げたが、自己紹介をしていないことに気づいた小林。「『お前は何者なんだ?』って思いますよね? ちょっとだけご挨拶をさせていただいてもいいですか?」と断りを入れ、「談志師匠から入らせていただきますね……『あのねえ!銭湯はねえ!裏切らないんだ!』」と、自分の名前より先に尊敬する立川談志の見事なモノマネを披露した。

すかさず吉田は「談志師匠が銭湯好きということを知っているお客さんはすごく面白いと思います。冥界から談志師匠を呼び寄せたかと思いました」と小林のモノマネに太鼓判を押し、観客は大きな拍手で応えた。

そしてイベントはアニメ第1話「与太郎放浪篇」を会場のスクリーンで上映しつつ、小林と吉田のトークを楽しむ「第1話 LIVEコメンタリー」のコーナーに突入。すべて上映するにはイベントの時間が足りないため、吉田は「僕の手元にDVDのリモコンがあって、これでところどころ早送りしていきます」と話し会場の笑いを誘う。第1話が始まり、満開の桜を背景に刑務所を出所した与太郎の登場シーンでは、小林が「関さーん!」と画面に手を振り、吉田が「出所するんだったら春にしよう……」と感想を漏らした。松田、八雲、小夏らメインキャラの登場シーンや、八雲が「死神」を演じる場面など名シーンの連続に、映像の早送りができない吉田。八雲が小夏に「不愉快な子だよ」とノートを投げつけるシーンに差し掛かると、小林は「(八雲に)謝りたくなる」と思いを吐露。また「八雲師匠に蔑まれたい」と告白する一幕も。

与太郎のすね毛がチラリと見えたシーンで吉田は「雲田はるこ先生はすね毛が好きだから、アニメでも省略されていないんですよ」と解説。このほか2人は独特のカメラワークやBGM演出の巧みさなどを語り、トークに花を咲かせた。

第1話の上映が終了し、会場には落語に造詣が深く、「渋谷らくご」のキュレーターも務めるサンキュータツオが登場。まず「今日は『ラブライブ!』の話でも……」と語り、会場を爆笑の渦に巻き込む。そして「アニメ『落語心中』の次回予告のBGM! 落語ファンは聞いた瞬間号泣ですよ! これは古今亭志ん朝師匠っていう、僕が青春を捧げた大名人の出囃子なんです」「しかも与太郎の本名・強次! これは志ん朝師匠の本名の美濃部強次からなんです!ありがとうしかない!」と落語ファンとしての思いを興奮気味にまくし立てた。また劇中で八雲が演じた落語「鰍沢」の説明をしつつ、トリビアを披露。「鰍沢」は身延山に参詣をした旅人が大雪で遭難し、山中で偶然見つけた一軒家で元花魁と再会した一夜の出来事を語る演目。サンキュータツオも吉田も「こんな凍てつく寒さの日に『鰍沢』を見られるなんて人生に1度あるかないか。幸せですよ」と声を揃えた。

そしてサンキュータツオが「国内最高の『鰍沢』をする1人」と紹介し、落語家・入船亭扇辰が高座に上がる。入船亭扇辰は「若いご婦人が多いですなあ。なんかいつもと調子が違う。はっきり言ってやる気が出ます! 今日はやりますよ」と観客をほぐし、「鰍沢」を披露。200人を超える観客を、絶品の話芸で魅了した。

演目が終わり、客席からステージに戻る吉田、サンキュータツオ、小林の3人。興奮冷めやらぬ吉田とサンキュータツオに対し、小林は「まだここに立たせていただく気持ちに達していない。まだ『鰍沢』のなかにいて……」と放心した様子。3人ともそれぞれ大好きな落語の余韻に浸っていた。

いよいよイベントも終盤。吉田が「次回は男性声優による落語チャレンジ企画をします」と発表すると、観客からは歓声が上がる。「声優落語天狗連」は、アニメ「昭和元禄落語心中」の放送期間中に定期的に開催される予定だ。第2回は2月に開催され、男性声優の落語や劇中に登場した噺が披露されるとのこと。アニメ「昭和元禄落語心中」で落語に興味を持った人は、足を運んでみては。