第154回芥川賞を受賞した滝口悠生氏と本谷有希子氏が19日、東京・日比谷の帝国ホテルで会見に臨み、それぞれが出身地に対してクールな思いを語った。

(左から) 直木賞の青山文平氏、芥川賞の本谷有希子氏、芥川賞の滝口悠生氏

滝口氏は『死んでいない者』で2回目の候補にして受賞。埼玉県育ちで、地元テレビ局のテレビ埼玉から「作品を作る上で育った場所が何か影響を与えたということはあるのでしょうか?」と質問が飛んだが、「えーと、あんまりないと思います」とつれない答えで会場の笑いを取った。

質問者はさらに「埼玉県への思いを聞かせてもらえますか?」と食い下がるも、滝口氏は「ないですね」とバッサリ。しかし、これで終わってはいけないと思ったのか、「埼玉好きですよ。嫌いな訳ではないです」とフォローを入れていた。

一方、『異類婚姻譚』で4回目の候補にして受賞した本谷氏は「頭が真っ白」と感想。石川県出身者で初めての芥川賞受賞となり、地元紙の北國新聞から「石川の生活が今の執筆活動に与えている影響は?」と質問を受けた。

滝口氏と同様の質問に、本谷氏はそのやり取りを思い出して苦笑い。「これだ、と言うこともできるんですけど、全部ウソっぽくなる」とけん制しながら、「自分がどういう人たちに囲まれていたかということは、ものの考え方とかにすごく影響してるだろうなと思っています」と難質問を乗り切った。

左右別の靴下を履いてきてしまった本谷氏

ほかにも、滝口氏は「喜びを誰に伝えたいか?」という質問に「だいたいもう伝わってると思います(笑)」、受賞作に登場する歌手、テレサ・テンが好きなのかを尋ねられると「えっと、そんなに、別に…」とつれない答えで会場を笑わせ続けたが、今回の受賞については「ヤバいと思ってます」と事の大きさを実感している様子。

本谷氏は、かつてアニメ『彼氏彼女の事情』で声優を務めたこともあるが、「あまりの棒読み加減に絶望したので、もう(声優をやることは)ないと思います」と断言。また、受賞の電話を受けた時は「(ここでは)言えないような変なことをしていて…」と謎の行動をほのめかしたり、受賞を聞いてから10分後に家を出発したため、「あ、間違った」と気づきながら、左右別の靴下を履いてきてしまったりと、不思議な一面を見せていた。

同日に発表された第154回直木賞を受賞したのは『つまをめとらば』の青山文平氏。同氏は会見で、歴代2番目の高齢(67歳)での受賞に触れ、「候補に選んでいただいた時は、ああこれで3年は食えると思いました。3年食えると死ぬ時期も近づいてくるので…」と自虐的に喜びを語りながら、「書く以上は、常に今よりいいものを書きたい」とさらなる意欲を示した。