富士通研究所(富士通研)は1月18日、哺乳動物の平均的な体重と公開されている植生や土地の用途などの情報から動物の生息可能数を予測する技術を開発したと発表した。同技術を活用し、食害による被害が年々深刻化しているニホンジカの生息数予測に適用する実証を、山梨県森林総合研究所の協力を得て1月から開始する。

生物多様性は、さまざまな生物がバランスよく存在することで保たれるが、近年ニホンジカの急激な増加による食害で、高山植物などの希少な野生植物の減少や森林の荒廃が進み、生物多様性の損失が懸念されている。食害への対策には、現地調査により生息数を推定し、分布の拡大を予測することが必要となり、従来は推定のために調査員を対象となる地域に派遣してサンプリング調査を行っていた。

今回同社が開発したのは、植物の種類や分布を示した植生図、地形図、気象情報などの公開されている情報と、動物の基本的な生態の情報から、現地調査をすることなく生息可能数を予測する技術で、山梨県甲州市の10km四方の地区において、ニホンジカの生息可能数を予測した。ニホンジカの生態を想定して、生息に適した生息地、生息に適さない非生息地、生息には適していないが移動に利用できる通路に区分し、通路で連結した生息地を抽出、ニホンジカの生息密度と体重の関係式を当てはめることにより、1km四方に区切った区画ごとの生息可能数を算出している。

ニホンジカの生息可能数の予測(山梨県甲州地区の例)

実証では、現地調査員による目撃数や糞の分布など、ニホンジカの生息状態に関する現地調査データを取得し、同技術による予測数と比較、解析を行い、そこで得られた新たな生態などに関する知見を導入して同技術の精度向上を目指すとしている。