京都大などがALSの病原タンパク質を分解する仕組み発見 - 治療法開発へ期待

 

京都大学と和歌山県立医科大学による共同研究グループはこのほど、神経難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因タンパク質の異常構造を、特異的に認識して分解する仕組みを発見したと明らかにした。ALS病態の解明と治療法開発へつながる可能性があるという。

同研究は、京都大学大学院 医学研究科の漆谷真准教授らのグループが実施したもので、英国科学誌「Scientific Reports」誌に掲載された。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、随意運動を司る神経がほぼ選択的に死滅し、全身の筋肉の萎縮と筋力低下を進行性にきたす神経難病。重篤な神経難病の一つであるが病態は不明で、根治的な治療法も存在しない。

ただ、以前からALSの病巣に異常凝集物が蓄積する現象は知られており、近年 「TDP-43」というタンパク質が主な成分と判明したことから、治療標的として注目を浴びている。

研究チームは今回、がん関連タンパク質「von Hippel Lindau(VHL: がん抑制遺伝子の一つ)」と「Cullin2(CUL2)」からなるユビキチンリガーゼ複合体が、ALSで出現する病的なTDP-43と結合し、ユビキチン化とプロテアソームでの分解を促進することを発見した。

標識した TDP-43タンパク質を「ユビキチン・プロテアソーム系」(ユビキチンという小さなタンパク質を標識に用いて、標的となるタンパク質を特異的に分解するタンパク質分解機構)に必要な分子を含む細胞破砕液と混ぜてユビキチン化反応を起こし、ReCLIP法という方法でユビキチン化の過程でTDP-43と架橋剤で結合させられたタンパク質を回収。結合を解離させた後に質量解析を行い、アミノ酸配列を同定した。

さらに、同定された分子が病的なTDP-43のユビキチン化や分解、さらにALSの病態とどのように関連するかを調べるべく、培養細胞の遺伝子導入実験や独自の抗体を用いたALS患者組織の組織化学解析を行った。

質量解析の結果、VHLとCUL2からなるユビキチンリガーゼ複合体が、ALSで出現する病的なTDP-43と結合し、ユビキチン化とプロテアソームでの分解を促進することを発見した。

また、TDP-43分子の中で異常構造の目印となる配列(246番グルタミン)を特定。一方で、培養細胞ではVHLタンパク質のみが過剰になると、むしろTDP-43は異常に蓄積し、病的な凝集および封入体形成を促進するというALS病態の悪化を再現した。さらにTDP-43 の機能が低下すると、VHLタンパク量が増加することが確認されたという。

ALS患者脊髄の観察により、VHLは「オリゴデンドロサイト」というグリア細胞(神経細胞の周囲にあり、形態維持や栄養補給を行う細胞)内の細胞質に存在し、「グリア細胞質封入体(GCI)」と呼ばれる病的な封入体で異常なTDP-43と共存しており、VHL/CUL2の機能不全が同細胞の凝集体形成の背景にあることが示唆された。

以上の結果より、正常人が持つTDP-43タンパク質がALS発症に関係する異常構造体に転換した際に、それを認識し排除する仕組みが存在し、その一つがVHL/CUL2 複合体であることが示されたという。

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