国立極地研究所(極地研)は1月14日、南極で1983年に採取されたコケ試料からクマムシを取り出し、蘇生直後の回復と繁殖の様子を記録することに成功したと発表した。

同成果は極地研の辻本惠 特任研究員を中心とする研究グループによるもので、科学誌「Cryobiology」に掲載された。

クマムシは厳しい環境に対して無代謝状態になるクリプトビオシス能力を持つことで知られる。クリプトビオシス能力を持つ微小動物の冷凍による長期保存記録は南極のセンチュウで25.5年というものがあり、蘇生後の繁殖にも成功している。南極のクマムシでは-70℃で5年間保存された後に蘇生し、繁殖を行ったという記録があるが、蘇生後の回復状態や繁殖状況を詳しく調べた研究はほとんどなかった。

今回の研究では、1983年11月に南極昭和基地周辺で採取されたコケ試料を解凍して給水し、蘇生した2固体のクマムシと、クマムシの卵1つを取り出して培養した。クマムシのうち1固体は死亡したが、もう片方の固体と卵はその後複数の繁殖を行った。

回復したクマムシは蘇生直後はほとんど動かず、歩きまわってエサを食べるのなどの通常状態に戻るまでに2週間かかった。また、1回目に生んだ卵は孵化まで19日かかり、2回目以降に生んだ卵に比べて2倍近くの期間を要した。

これらの観察結果から、30年以上にわたるクリプトビオシス状態での長期保存直後にも、動物が繁殖を行えることが明らかになったほか、蘇生したクマムシの回復状態や繁殖状態から長期保存による損傷が蓄積していた可能性が示唆された。一方、蘇生した卵から孵化したクマムシでは、動きや繁殖状況に明らかな損傷は確認されなかったという。

研究グループは今後について「長期保存後のDNA損傷の状況や、回復期における修復機構を調べることで、クリプトビオシス動物の長期生存メカニズム解明への貢献が期待されます」とコメントしている。

蘇生した南極クマムシ。腹部の緑色は餌のクロレラ。右の線は0.1ミリメートル。