波乱の大会を制した藤枝順心…2得点のヒロイン肝付萌「一番らしさ出せた」

 

9年ぶり2度目の女王に輝いた藤枝順心 [写真]=吉田孝光

 藤枝順心高校(東海第1代表/静岡)と神村学園高等部(九州第1代表/鹿児島)が対戦した高校女子選手権の決勝は、藤枝順心が3-2でこれを制し、9大会ぶり2回目の優勝を飾った。

 多数の在校生による声援を受けて3分に先制した藤枝順心は、前半のうちに逆転を許し、1-2でハーフタイムを迎えて一時は苦境に立たされた。しかし今大会好調だった神村の守備を崩し切り、後半にもう2点を追加。日ノ本学園高校(関西第2代表/兵庫)や常盤木学園高校(東北第1代表/宮城)といった強豪校が次々に姿を消す波乱含みの大会を見事に制した。

「ホッとしましたね。疲れました。もちろん喜びもありますが。長い大会でした」

 試合を終えてミックスゾーンで取材に応じる藤枝順心の多々良和之監督は、安堵の表情だった。前回大会はMF杉田妃和(INAC神戸レオネッサ)を擁しながらも、ベスト4で敗退。それ以前から何度も優勝候補に挙げられながら、9大会日本一から遠のいた。

 5926人が集まった決勝戦では、得点源のFW児野楓香が厚いマークを受けて、まったく仕事ができなかったものの、児野と3トップの一角を担うFW肝付萌が2得点1アシストと大活躍。

「一番自分らしさを出せた試合。相手チームは(児野)楓香をマークするから、自分のマークは薄くなるはずと思っていた」と大一番での活躍に白い歯を見せた。

 勝利の立役者となった肝付はインターハイ後に右足を負傷し、手術をしても完治できないと告知された。「ケガして約2カ月は別メニューになり、順心は層が厚いチームだから、少しの休みでも(ポジション争いに)大きなダメージと言うか、不安になることばかりだった」と一時は後ろ向きな考えに。しかし「そう考えていても先に進まない。今もテーピングを巻きながらのプレーで、フル出場するのは難しいけど、ケガと付き合いながらプレーするしかない」と前向きに再びピッチへ出た、その先に待っていた栄光だった。

 神村が得意とするセットプレーへの対応も光った90分だった。藤枝順心のMF黒﨑優香主将は「例えば17番の選手(MF橋谷優里)にはしっかり(マークに)つくことを練習してきた。準決勝の大商学園高校(関西第1代表/大阪)戦では、一番マークしなきゃいけない選手を外して失点したので、今日は自分が責任を持って(橋谷の)マークについた」と3日前の苦い経験を活かして、相手の長所を消すことに成功した。

 2回目の日本一に導いた多々良監督は、「チームの立ち上げ当初は、全国大会に出られればいいな、くらいの不安を抱えてスタートした。ポゼッションの面でいうと去年のチームと比べると劣るが、今年は遅攻と速攻ができるチームになった」と412校の頂点に立ったチームの成長に目を細め、黒﨑も「今年は勝てないチームだったが、目標を持って続けることによって、ここまで来ることができたという点では、本当に報われたと思う」と少しの驚きも含ませながら全国制覇を喜んだ。

 一方、神村の寺師勇太監督も「私たちはここまで守備(の強さ)で勝ち上がってきた。3失点は完敗を認めざるを得ない。でもインターハイ予選で敗退するほどノーマークだったチームがここまで来ることができた」と、下馬評を覆しての準優勝に一定の評価。

 育成年代の選手・チームが持つ伸びしろや可能性は、計り知れないと感じさせる、白熱の決勝戦だった。

文=馬見新拓郎


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