16年間のプロ人生を振り返る鈴木啓太「“浦和の男”として終わりたいと素直に感じた」

  [2016/01/10]

引退会見に臨んだ鈴木啓太 [写真]=田丸英生

 2015年シーズン限りで現役生活にピリオドを打った浦和レッズのMF鈴木啓太が10日、さいたま市内のホテルで引退記者会見を行った。34歳の元日本代表は「ちょっと寂しい気持ちはあるが、将来に向けてワクワクすることがたくさんある。選手としては終わったけれど、また新たな戦いが始まるなという気持ち」と16年間のプロ生活を振り返りながら今後への思いなどを語った。

 ユニフォームを脱ぐきっかけの一つが体調面の不安だった。2014年のシーズン終盤に不整脈と診断され、昨年は明治安田生命J1リーグで4試合の出場にとどまった。10月20日にブログで退団を発表し、引退の可能性も示唆していた。ただ、他クラブから獲得のオファーもあり「本当に悩んだ。サッカー選手として続けるのであれば可能だったのかもしれないが、コンディションの不安、問題もあった。その中で100パーセントでできなければピッチに立つ資格はない。僕は浦和に育ててもらい、ここで辞めるべきだと思った。“浦和の男”として終わりたいと素直に感じた」と決断した経緯を説明した。

 東海大翔洋高(静岡)から2000年に加入し、2003~07年には中盤のキーマンとしてAFCチャンピオンズリーグ(ACL)をはじめJリーグ、ヤマザキナビスコカップ、天皇杯優勝に貢献した。そんな輝かしいキャリアの中でも、最も印象に残っている試合として挙げたのが、J2降格の危機に瀕した2011年のアビスパ福岡とのホーム(6月22日/第17節・○3-0)とアウェー(11月26日/第33節・○2-1)のリーグ戦。「当時キャプテンをやらせてもらい、非常に苦しいシーズンを送った。絶対にJ2に落としてはいけないと強く感じていたし、僕にとってはACLの決勝戦よりも大きな試合だった」と実感を込める。

 この低迷期には主将として並々ならぬ重圧に押しつぶされそうになったが、2012年のミハイロ・ペトロヴィッチ監督の就任が大きな転機になった。「2010年はコンディションやパフォーマンスが上がらず、実際に『もうサッカーを辞めたいな』と思っていた時期。その後(2011年)に残留争いで本当に苦しいシーズンを送り、このまま浦和レッズにいても力になれないんじゃないかと感じている時にミシャ(ペトロヴィッチ監督)が来た」と振り返る。責任感が人一倍強い鈴木に対し、監督は「お前はそんなことを考えなくていいんだ。毎日大原(練習場)にサッカーをやりたい、サッカーが楽しいと思って来てくれ」と声を掛けたという。当時30歳でキャリアの終盤に差し掛かっていたが「そこから僕のプロとしての第2のサッカー人生が始まった。子どもの頃の気持ちを呼び起こしてもらった監督」と感謝する。

 数多く出会った指導者の中では、2006~07年に日本代表を率いたイビチャ・オシム監督の存在も大きかった。豊富な運動量を生かした泥くさい守備や、シンプルにパスをつなぐ堅実なプレーが高く評価されて代表デビューを果たし、同監督の下では全試合に出場した。「オシムさんに『水を運ぶ人』と言われて、そのイメージが強いと思う。そうやってあまりスポットライトを浴びなかった僕にうまい言葉でスポットライトを浴びさせてもらった。『オシム語録』と言われるものもあるが、それは僕自身の人生の教訓にしたいし、素晴らしい監督だった」と特別な思いを口にした。

 今後、自らが指導者の道に進むつもりはなく「監督は選手側から見ていてとてもストレスのかかる仕事だし、僕自身は不整脈を持っているので心臓に悪いことはあまりしない方がいい。浦和レッズの社長の方が興味ありますね」と冗談めかして笑う。一方、具体的なセカンドキャリアとして健康産業への強い関心を口にし、昨年から知人と腸内フローラを解析する事業を立ち上げたことを明らかにした。「今スポーツ科学の分野がかなり盛り上がってきている。外から選手のコンディションを整え、パフォーマンスを向上させることは一般の人にも還元できる。サッカーとは畑違いと思う方もいるかもしれないが、選手にとって一番大事なのは健康。そういったことに力を注いでいけたら」と力説する。

 2年目から15シーズンつけ続けた背番号13の後継者について「僕よりもうまい選手はたくさんいると思うが、僕の印象や残像は残っていると思う。それを変えるような活躍をしてもらいたい」と期待する。そして2007年のACL制覇を最後に主要タイトルから遠ざかっているチームに向けて「一ファンとして言いたいのは、タイトルを取ってくれということだけ。期待に応えられるだけの力は養ってきたと思うので、今シーズンは優勝してください」とエールを送った。

文・写真=田丸英生(共同通信社)


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