児童虐待を早期発見するカギは「歯の状態」にあった - 三重県での取り組み

横山茉紀  [2016/01/06]

むし歯&生活習慣で虐待を早期発見

児童虐待は、身体的虐待や心理的虐待、性的虐待、育児放棄があるが、特に育児放棄(ネグレクト)と歯の状態は深い関係があるという。三重県では、歯科健診の結果と生活習慣のアンケートを組み合わせた指標をもとに、ネグレクトなどの早期発見につなげている。取り組みの内容を三重県歯科医師会に聞いた。

被虐待児のむし歯保有率は一般の2倍以上

同取り組みは、三重県歯科医師会が県などと共に実施しているもの。きっかけは、むし歯と虐待の相関関係を示した東京都歯科医師会の調査結果だった。調査では、被虐待児のむし歯保有率が47.62%にのぼり、一般(20.93%)の2倍以上であることがわかったのだ。

これを受けて三重県歯科医師会でも、要保護児童(児童相談所の一時保護所に入所した小学生)57名と小学校に通う575名の児童を対象にした調査をそれぞれ実施。むし歯(永久歯)になったことがあるかや、生活習慣について調べた。結果、要保護児童はいずれの学年においても、むし歯になった経験やむし歯の未処置率が一般の小学生に比べて高かった。さらに、要保護児童は一般の小学生に比べて4~7倍、朝ごはんの後に歯を磨かない児童が多いこともわかったという。

見守りが必要な児童を顕在化させる指標

そこで開発されたのが「MIES」と呼ばれる見守りが必要な児童をスクリーニングするための指標だ。「寝る前に歯を磨きますか」「ハンカチ・ティッシュを持っていますか」などの生活習慣に関する質問の答えを点数化し、歯科健診の結果を組み合わせることで算出される。その後学校では、「MIES」の点数が低かった児童の家庭状況を調べ、見守りが必要かどうか判断。関係者との情報共有や児童の観察につなげていく仕組みとなっている。

県内の小学校で行った調査結果(平成25年)によれば、スクリーニングされた子どもの特徴として、「身体や衣服が極端に汚れたままで登校する」「特別の理由がないのに体重の増えが悪い」などがみられたという。さらに親に関しても、「職員との面談を拒む」「(子どもが)登校していないのに連絡がない。訪問すると親が不在である」などの生活状況が確認された。

結果として、以前から学校で問題意識のあった児童の半数以上が「MIES」で陽性と判断された。さらに、学校で意識していなかった児童の中にも「MIES」で陽性と判断される子どもたちがいて、これまで顕在化していなかった見守りが必要な児童も発見することができた。

妊婦段階での問題把握につなげたい

三重県歯科医師会常務理事の羽根司人氏はこれらの結果について、「歯の状態から、家庭の生活習慣や保護者の健康に対する意識が伺える」と語った。現在は「MIES」を活用して、歯と口の健康教育がどのように行っていけるかについても、調査を進めているという。

さらに同県歯科医師会では、子どもが生まれる前の「妊婦」の段階からのアプローチも検討している。「妊婦が重度の歯周病にかかっていると、早産になったり、子どもが低体重児になったりする可能性があり、子どもの育てにくさにつながることがある。妊婦の段階からアプローチできれば、早い段階で歯科医師が子育て支援に関わることができる」と指摘。「29市町のうち、11の自治体で妊婦対象の歯科健診を行っているにすぎず、残りの18の自治体では実施に至っていない」とのことで、妊婦の歯科健診も、さらに推進していく必要があると訴えた。

厚生労働省によれば、全国の児童相談所が平成26年度に対応した児童虐待の件数は、8万8,931件と過去最多。一刻も早い対応が必要な状況だ。同取り組みのように、虐待の早期発見につながるさまざまな分野からのアプローチが求められている。

※写真と本文は関係ありません

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