21世紀は〈魔法の世紀〉!? 今、世界中で起こりつつある社会変化、その本質とは何か?

 

『魔法の世紀』(落合陽一/PLANETS)

 コンピュータの登場とその発展は、人類社会を大きく変化させていく。それはもはや必然であるといっていいだろう。なぜなら、印刷や写真、映像などの技術発展に大きく影響を受け続けてきた社会に、私たちはすでに暮らしているからだ。テクノロジーはいつだって社会のかたちやその中での暮らしを変えてきたし、それはこれからだって続いていく。

 そして、コンピュータというテクノロジーが作り出す変化は、社会を新たなステージへと移行させようとしている。それが著者のいう〈魔法の世紀〉だ。

 著者が考える21世紀とは、人間や物事が映像のような中間物を媒介することなく、コンピュータによって直接つながる時代。本書が述べるに、〈魔法の世紀〉は、20世紀という〈映像の世紀〉においてイメージの中で起こっていた出来事が、物質の世界へ踏み出していく時代。そのような変化の中に、私たちは今、暮らしているのだ。その変化の本質が、本書で描かれる内容となっている。

 〈魔法の世紀〉における社会の中のコンピュータは、いわゆる「ユビキタス」(偏在)という言葉から一般的に想像されるものとは、全く異なったかたちをしている。

 そこでのコンピュータは、目に見えて偏在するのではなく、そこに暮らす人々に意識されなくなっていく方向に発展していく、という。つまり「これからのコンピュータは自然化していく」ということなのだ。まるで空気や植物のような、そんな発展の仕方を、これからのコンピュータはしていく。デバイスの存在がユーザーに意識されている時点で、その進化は全く徹底されていないとまで著者は述べているのだ。

 そのようなコンピュータの「自然化」を説明するキータームとして、本書で提唱されているのが「デジタルネイチャー」という概念だ。コンピュータが自然化した社会では、人間のファンタジーを実際の空間に実装することができるようになってくる。コンピュータによって、人間が私たちの生活している現実空間をかなり自由に操れるようになるのだ。

 つまり、21世紀における「魔法」とは、「ものを操る言葉」、言い換えれば「コード(呪文)」といってよいものだろう。まさしく今世紀は、誰もが「自然」に「魔法」が使える時代へとメタモルフォーゼしていく。それが〈魔法の世紀〉ということになるだろう。

 また本書では、人類社会がすでに足を踏み入れているこの〈魔法の世紀〉において、アーティストという存在もまた、更新される必要があるとしている。無数のコンテクストを有する「島宇宙」のひとつにすぎない美術界の文脈上でのアート活動が主流の時代は、もはや終わりを告げているというのだ。

 これからの人類社会を考えていく上でも、現在のアートというものが置かれた位置を考えていく上でも、無視することのできない記念碑的な著作となっている。まるで音楽のように奏でられる歴史の旋律とそのロジックは、読者の思考を〈魔法の世紀〉へとアップデートしてくれるだろう。同時代に生きる多くの人々にとって、これは必読の書としかいいようがない。

文=中川康雄


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