日本では理解が低い「1000人に1人誕生するダウン症」の真実

 

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初めての妊娠、そして出産。どんな子どもが生まれてくるか、妊婦さんなら一度は不安を抱くものですよね。

しかし、「障害があったらどうしよう」と不安に思ったとき、いまの日本は安心して子どもを産める国だといえるでしょうか。

今回ご紹介する『ダウン症って不幸ですか?』(姫路まさのり著、宝島社)は、ダウン症のお子さんを持つ「普通の」ご家族の生活を紹介しながら、ダウン症への正しい理解、現在の行政の制度のあり方までに言及する、渾身の一冊です。

著者である、放送作家の姫路まさのりさんに、本書に託した熱い想いを伺いました。

■きっかけはメディアの報道に対する違和感

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姫路さんが中学生のころ、テレビで見たダウン症の子どもがいかに芸術的に優れているかに焦点を当てた番組を見た際、「ダウン症なのにすごい」という描かれ方に、つよい違和感を覚えたといいます。

たしかに、ダウン症でもそうでなくても、芸術の才能がある人はあるし、ない人はないというのは当たり前のことですよね。

その後、姫路さんは放送作家になり、縁があり、ダウン症の子どもを持つご家族と知り合いになったそうです。そして話をするうちに、ダウン症は世間が思っているほど重い障害ではないし、逆に、いきいきと子育てをするお母さんたちも多く、自分たちとそんなに変わらないと思うようになったといいます。

■2012年開始の新型出生前診断に物申す

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世界的にみても1,000人に1人の割合で産まれるダウン症は、決して珍しい障害ではありません。近年、その数は増加傾向にありますが、2012年に始まった新型出生前診断は、ダウン症を含む胎児の染色体異常が高い確率でわかるということばかり、大きく取り上げられました。

実際、2014年の検査結果によると、胎児の異常がわかった119人の妊婦のうち、113人、つまり95%が中絶を選んだというのです。

姫路さんによると、出生前診断のニュースに心を痛める、ダウン症の子どもを持つお母さんたちは少なくなかったそうです。

姫路さんは、「出生前診断は、生まれてくる子どもに障害があることがわかった場合、本来、その子どもが生まれた後に生きる道を照らしてあげるための検査であるはずなのに、生きる道を閉ざすための検査になっている」と指摘しています。

■生きやすい社会の「お手本」は海外にある

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なぜ日本では、ダウン症を含めた障害への強い抵抗のようなものがあるのでしょうか。

姫路さんは、まず、ダウン症自体への理解が低いことを挙げています。

ダウン症=短命である、と思っている人は少なくありません。たしかにダウン症の子どもが心疾患を持つ確率は50%と高めですが、医学の進歩もあって早期治療が可能になったため、一概に短命というわけではありません。

また、知的障害を伴う子どもも多いのですが、これは「幼少時の知的レベルの発達が遅い」といった方が正確であり、成人になれば「そこまで知的障害を感じることは少ないのが現状」だそうです。

次に、行政のあり方に問題があると姫路さんは指摘しています。

イギリスでは2004年の段階で、すべての妊婦が出生前診断を受けるそうです(日本は任意)。「異常がわかった途端、中絶を選ぶ方ももちろんいますが、同時に生まれてくる子どもに対するケアがすごくしっかりしている国でもあるのです。また、障害者の差別を禁じる法律も、すでに1995年には出来ています」と姫路さん。妊婦へのカウンセリングも、ほとんど医師が行う日本とは異なり、専門家が対応します。

つまり、産まれてくる子どもに障害があったとしても、妊婦が安心して出産に臨める体制がある、ということですね。

■ダウン症の子育てにはこんな利点がある!

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ダウン症の子どもは、「他の子とくらべようがない」ため、子どもにしっかり向き合う子育てができると姫路さんは感じています。

本書に出てくる松原祐哉くんのご両親は、裕哉くんの成長が他の子どもとくらべて遅いことについて次のようにいっています。「うちはゆっくり子どもの成長をみつめられる分、幸せだなぁとしみじみ思います」

たしかに、子育てにおいては、つい過度な期待を抱いたり、よその子どもとくらべたりして、その子自身を見失ってしまうことがないわけではありませんよね。

また、ダウン症の子どもを産んだことを、次のように表現するお母さんもいました。「1,000人に1人ってすごい確率でしょ! つまり私、”当たり”やん!」

そのお母さんは、出産後すぐに医師からダウン症の説明を受けているときから、「『知的障害で言葉が遅い』っていうたら、『じゃあ、ちょっとでも早く喋れたらがんばったなぁって褒めてあげよう』」と思ったそうです。

また、ダウン症の子どもを育てている人のなかには、社会で孤立している人もいるかもしれません。そういった方へのアドバイスを聞いてみました。

「まず先輩の話を聞くことをおすすめしたいですね。また、いまはSNSがありますから、人とつながることは難しくなくなってきていると思います」

本を出すまでは紆余曲折で、企画の段階では10社以上の出版社に断られたそうです。そこで、まずはラジオ番組という形で発表し、その番組が日本民間放送連盟賞を受賞したことが反響を呼び、今回の出版につながったのだとか。

「人は、知らないことはこわいと思うんです。まずは正しく知って、身近な人や、お子さんに伝えていってほしいですね」という姫路さんの言葉が耳に残りました。

(文/Kinkiii)

 

【取材協力】

※姫路まさのり・・・放送作家・ライター。1980年、三重県尾鷲市出身。二人の娘の父。2015年現在の主な担当番組『ちちんぷいぷい』(毎日放送)、『ビーバップ! ハイヒール』(朝日放送)、『武田和歌子のぴたっと。後半戦』(朝日放送)等。

朝日新聞 関西版 夕刊「味な人」連載。HIV・AIDS、ダウン症、発達障害などの啓発・支援事業に関わり、2014年、ABCラジオの番組『ダウン症は不幸ですか?』で、日本民間放送連盟賞 ラジオ報道番組部門 最優秀賞を受賞。

 

【参考】

※姫路まさのり(2015)『ダウン症って不幸ですか?』宝島社

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