理化学研究所(理研)と東京医科歯科大学は12月24日、歯のもととなる原基「歯胚」の分割操作を行うことで歯の数を増やす技術を開発したと発表した。

同成果は、理化学研究所 多細胞システム形成研究センター 器官誘導研究チーム 辻孝 チームリーダー、東京医科歯科大学 医歯学総合研究科 顎顔面矯正学分野 森山啓司 教授、大学院生の山本直 氏らの研究グループによるもので、12月17日付の英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

今回、同研究グループは、胎齢14.5日のマウスの臼歯歯胚をナイロン糸で結紮することでひとつの歯胚を2つに分割し、この分割した歯胚が口腔内で正常な歯に発生するかどうか、また、再生した歯が天然の歯と同等の生理的機能を持つかどうかを検証した。

この結果、6日後には上皮組織に囲まれ、完全に分断された2つの歯胚が発生。また、分割された歯胚が口腔内で正常な歯に発生するかを確認するため、結紮歯胚をマウス腎皮膜下に移植したところ、30日後にはエナメル質、象牙質、歯槽骨を持ち、歯根膜や歯槽骨に囲まれた正常な組織構造を持つ独立した2つの歯が形成されたという。

胎齢14.5日のマウス臼歯歯胚の結紮による分割操作と器官培養6日目の写真

歯の再生では、分割歯胚が天然歯胚と同等の組織構造を持つだけでなく、口腔内に移植したときに、移植を受ける個体の顎骨と正常に生着し、さらに周囲組織と連携し機能することが重要となっている。そこで同研究グループは、マウスの口腔内に分割歯胚を移植し、歯の発生過程をマイクロCTで観察。移植約2カ月後には反対側の歯と咬合し、機能していることを示した。さらに、分割歯に対して歯列矯正の際に加える力(矯正力)を加え、歯根膜の機能である骨リモデリングによる歯の移動について解析。矯正力を加えることによって十分な歯の移動が認められ、骨リモデリングを介した歯の移動がなされていることから、歯根膜機能も天然歯と同等であることを示した。また、分割歯では神経が再生し、中枢と接続して機能的であることもわかっている。

分割歯胚の口腔内移植後の経過像。分割歯胚をマウスの口腔内に移植しマイクロCTにて萌出過程を観察したもの。移植約2カ月後には反対側の歯と咬合していることがわかる

同研究グループによると、今後はこの方法をヒトに応用することで、先天性歯胚欠損や歯の喪失患者の自己歯胚を用いて、免疫学的拒絶反応を受けることなく歯の数を増やせる可能性があるとしている。