米国のスペースXは12月21日(現地時間)、通信衛星「OG2」11機を搭載した「ファルコン9」ロケットの打ち上げに成功した。ファルコン9の打ち上げは、今年6月の失敗以来初となった。また、ロケットの第1段機体の地上への着陸にも成功し、世界初の快挙を成し遂げた。

同ロケットは日本時間12月22日10時29分(米東部標準時12月21日20時29分)、米国のフロリダ州にあるケイプ・カナヴェラル空軍ステーションの第40発射台から離昇した。ロケットは順調に飛行し、約15分後から11機のOG2を順次分離し、すべてを所定の軌道に投入した。

OG2は米国のオーブコムが運用する衛星で、シエラ・ネヴァダによって製造された。オーブコムは地球低軌道を多くの衛星を展開し、山や海などの通信インフラが整っていない場所などを対象にした通信サービスを展開している。OG2はその次世代機となる。各衛星の質量は172kg、設計寿命は5年強が予定されている。

スペースXは米国カリフォーニア州に本拠地を置く会社で、2002年に立ち上げられた。これまでとは大きく異なる手法で、安価で高性能なロケットや宇宙船を開発し続けており、宇宙開発の革命児として知られている。

OG2を搭載したファルコン9の打ち上げ (C) SpaceX

ロケットから分離されるOG2 (C) SpaceX

打ち上げの動画 (C)SpaceX

ロケットの第1段機体の着陸にも成功

今回ファルコン9は、衛星の打ち上げ成功だけではなく、ロケットの第1段機体の地上への着陸にも成功した。

スペースXはロケットの運用コストを下げるため、機体を何度も繰り返し再使用することを目指している。これまで実験機を使った垂直離着陸飛行の実験や、打ち上げ後の第1段機体を海上や船の上に降ろす試験を行っていたが、地上への着陸は今回が初だった。

これまで、高度数百mから数kmまで上昇したロケットが着陸したことは何度もあり、また今年11月23日には、米国のブルー・オリジンが開発した「ニュー・シェパード」ロケットが、高度100kmまで到達した後に、地上への着陸に成功している。しかし、人工衛星を打ち上げたロケットの第1段機体が、地上への着陸に成功したのは、今回が世界初のこととなった。

着陸には成功したものの、機体が再使用できる状態にあるかどうかは検査を行う必要がある。同社では今後1年以内に、一度打ち上げに使ったロケットを再度打ち上げたいとしている。

地上に帰還したファルコン9の第1段機体 (C) SpaceX

6月の失敗以来の打ち上げ、ロケットは大幅に改良

ファルコン9の打ち上げは、今年6月28日の打ち上げ失敗以来初となった。この打ち上げでは国際宇宙ステーションに物資を補給する「ドラゴン」補給船運用7号機が失われた。その後の調査で、ロケットの第2段タンク内にある、ヘリウム・タンクを固定する支柱が破損したことが原因である可能性が高いとされている。この事故を受けて、同社ではこの支柱の使用を止め、またハードウェアの品質検査をより強化する対策がとられた。

また今回の打ち上げでは、機体やエンジンなどを大幅に改良した、新型のファルコン9が使われた。この改良は6月の事故前から行われていたもので、従来型と比べ、打ち上げ能力が約30%も向上している。

改良点はロケット全体に及んでおり、ロケット・エンジンの性能向上、第1段機体の構造の改良、第1段と第2段をつなぐ段間部の構造と分離機構の改良、第2段機体の延長とそれに伴う推進剤の搭載量の増加、さらに推進剤をこれまで以上に冷却して高密度化し、より多く充填できるようにするなど、多岐にわたっている。

ファルコン9は今回を含めて20機目の打ち上げとなり、前号機の失敗以外はすべて成功している。

打ち上げを待つ改良型ファルコン9 (C) SpaceX

【参考】

・spacex_orbcomm_press_kit_final2.pdf
 http://www.spacex.com/sites/spacex/files/spacex_orbcomm_press_kit_final2.pdf
・SpaceX(@SpaceX) | Twitter
 https://twitter.com/spacex
・Elon Musk(@elonmusk) | Twitter
 https://twitter.com/elonmusk
・Live coverage: Falcon 9 rocket launches, and lands, at Cape Canaveral | Spaceflight Now
 http://spaceflightnow.com/2015/12/20/falcon-9-orbcomm-2-mission-status-center/
・SpaceX | Webcast
 http://www.spacex.com/webcast/