消費財メーカーや小売業者は2015年上半期、成長率を大きく増加させることはできず、アジア太平洋地域の平均売上高の上昇率は2%に留まったという。これは、ニールセンが12月21日に発行したレポート「アジア太平洋 リテール&ショッパートレンド2015」にて明らかにされた。

同レポートよると、平均売上高の成長率は2014年の通年実績から1.4%上昇、物価上昇は3%未満と低下し、日用品の消費は2014年同様の5%増となった。

また、全体的には売上が伸び悩む一方、Eコマース(以下、EC)や小型店舗(以下、スモールフォーマット)での利便性の高い買い物を通じてユニークな顧客体験を提供する小売業では、平均よりも好調な成長率を示している。

アジア太平洋地域における消費財市場の動き(アジア太平洋リテール&ショッパートレンド2015)

戦略を考えるための7つのトレンド

同レポートでは、変化する小売環境に合わせて、小売業者と製品メーカーが戦略を考えるための7つのトレンドをハイライトしている。

これによると、1つ目のトレンドは「成長の阻害要因」で、成長の最上位指標として、消費財売上高と商品単価は上昇しているものの、マクロ経済因子と各国でのできごとが全体的な成長を抑制していることを示し、多くの従来型小売チェーンにとって成長が捕えどころのないものとなっていることを指摘。一方で、スモールフォーマットやECは東南アジア中に浸透しているという。

次にあげられるのは、「変化する購買層」。都市化の進行や縮小する家族構成、公衆衛生の改善、教育機会の拡大、そして高齢化により消費者層の構成がますます多様となり、その結果、消費者が有する異なるニーズのために、小売業者と製品メーカーはマス・マーケット戦略の修正を迫られる可能性がある。

3つ目にあげられた「"地元性"の活用」は、利便性でちょっとした買い物を最大限取り込むスモールフォーマットやトラディショナルトレードストアなどの小売形態が市場シェアを拡大させていることを指している。同形態は、「近くにある」という利点を活かし、買い食い・ついで買いだけでなく、消費者の食糧庫の延長としての役割を果たし、「持ち帰り」というライフスタイルを可能にする便利なサービスを提供。今後、従来の大型店の市場シェアを奪っていくことが想定される。

4つ目は「プレミアム化」。過去1年間で、同じ製品カテゴリの平均よりも20%以上高額な製品の売上高が、東南アジアで21%、中国で23%増加している。このプレミアム化も、消費者が高品質で贅沢な製品を求めるにつれて加速すると考えられる。

5つ目にあげられた「健康志向」は、パーソナルケア店やドラッグストアが、分析対象の13市場における消費財総売上の7%を占め、消費者が健康に役立つ製品に注目していることを表している。消費者の約84%が、「健康で幸福な生活を確実にもたらす製品のためならもっとお金を使ってもいい」と回答しているようだ。

6つ目の「オンライン/オフラインでの値打ち感の追求」では、アジアの中でのプロモーションによる売上は、オンラインおよび従来型店舗の両方で拡大傾向にあり、このことから、スモールフォーマット店舗がより大規模な競争相手と競うことが可能となることを指摘。店選びにおいて価格がますます重要な決定要因となっていると説明する。

なお、同社では最後に、「デジタルの未来」をトレンドとしてあげ、アジア太平洋の消費者の約82%が、「オンラインショッピングは便利だ」と考えており、約50%が「今後6カ月以内にオンラインで買い物をすると回答している」とし、オンラインショッピングアプリとスマートフォン普及率の上昇が、消費財小売業者にとってECプラットフォームが必須となることを意味しているとした。