ヤンチャな性格、10カ月の欠席、外野手……日本ハムドラ8となった姫野優也がそれでも活躍できる理由


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☆“あの”岩隈が指名された時代のドラフト

 この夏の高校野球を大いに盛り上げた大阪偕星学園の山本皙監督がぼやく姿を何度か見た。

「やっぱり、どこの世界も今はサラリーマン化してきてるんでしょうねえ……」

 この一言が出る時の話題は決まっていて、姫野優也の話をしている時だ。夏の大会中から、戦いが終われば姫野がプロ志望を出す、と聞いていた。そこでプロ側の感触などを山本監督に確認することがたびたびあったが、その実力を存分に評価する声が少なかったのだろう。スカウトに対するボヤキが、つい口をついて出た。

 この話の時によくセットで出てきたのが岩隈久志のドラフト話だった。堀越高校時代は華奢も華奢で、ストレートは調子が悪いと120キロ台だったという岩隈を1999年のドラフトで近鉄が5位指名。のちにマリナーズの日本在住スカウトも務めた山本泰氏が岩隈の素材に惚れ込み、なんとか指名にこぎつけたという。それが今や、メジャーリーガーという話だ。

「当然反対も多かったと思うんです。でも、自分の目を信じて、周りの声を押し切ってでも指名する。それがやっぱり、プロの仕事だって思うんですよね。だけど今はなかなかそういう時代じゃないんですよねえ、どこの世界も」(山本監督)



☆脱いだらすごいんです! 姫野の広背筋

 思わずぼやきたくなるほど、山本監督は姫野の力を高く、高く買っていた。僕が始めて姫野を見たのは、天理から移ってきてまだ2カ月も経たない、一昨年の11月。チームの取材に伺ったところ、山本監督が期待の編入生について熱く語ってきたのだ。

「モノは抜群です。冬を越したら145キロくらい出るんじゃないですか」

 実際、その日に行われた紅白戦で見た姫野のボールは2年後のドラフト候補を予感させた。

 ところが、昨夏になった頃になると姫野の姿が見えなくなった。あとで聞けば、春先から約5カ月、練習に出なくなっていたのだ。部内で規則違反をし、それがきっかけでグラウンドへ来なくなった、と聞く。しかし、山本監督らの親身の説得で秋にはグラウンドへ復帰。そこからは野球に取り組む姿勢も変わり、一気に素質が開花。しかも、期待の投手として以上に野手としても急速な伸びを見せ、山本監督、そして僕の期待も大いに高まった。

 山本監督の申告によれば「135メートルくらい」という“鬼肩”(マウンドに上がれば140キロ台半ばを投げる)に、試合出場が限られた中で通算26本塁打の長打力。そんな打つも投げるも、パワーの源となっているのが、発達が素晴らしく、盛り上がりが目を引く広背筋だ。実際にアンダーシャツを脱いで見せてもらったが、背中右側から肩にかけての盛り上がりはまあ、見事なものだった。小手先の技術ではない、素材としての高さを表わしていた。



☆ほぼ素質だけでプレーして、この実力

 そこに何より僕がドラフト前などの原稿でも強調してきたことがもう1つ。

 1年時に天理の野球部の練習に出なくなったあとの5カ月。そして2年時の空白の5カ月。実質2年と4カ月、つまり28カ月しかないとされる高校野球生活のうち姫野は1/3以上の10カ月を“欠席”しているのだ。それでいての今の実力。これを僕はスカウトと話す中でも常に訴えてきた。

「もし、2年の段階でこの力を持った選手がいれば間違いなく次の年の上位候補じゃないですか?」

 しかし、結果は日本ハムが8位指名。高校生野手、特に外野手となると指名順位が低くなりがちなのは確かだが、それにしても他の野手の顔ぶれと見比べて、僕は大いにこの評価が不満だった。そして、おそらくは山本監督も。


 ドラフト後、あるところから聞こえていきた噂話があった。姫野に興味を持っていた球団もあったが、天理中退、あるいは昨年の“欠席”など、このあたりがひっかかり指名に消極的になった……。そんな話だった。

 事実はわからない。しかし、もし、本当だとしたら、情けない話ではないだろうか。今の姫野を見れば、少々“元気のいい“部分は残しながらも、野球に取り組む姿勢にウソはなく、2度も離れかけたからこそ、今度は……という姿勢も見える。そこを見抜けないのか? さらに、そこを見切れず、仮にヤンチャな面を多分に残していると判断したとして、そこをしっかり教育するのもプロの仕事ではないのか?

 その点、日本ハムはこれまでも実力優先で個性の強い選手を積極的に獲ってきた。ダルビッシュ有(現レンジャーズ)しかり、中田翔しかり、西川遥輝しかり……。

 各球団、会社によっての考え方があることはわかる。特に今は、グラウンド外の行動に対しての求めも厳しくなっている時代だ。とは言え、時代は変われど、プロの実力が一番のはず。そう思うと、納得しがたいものが残った。

 ただ、今となってはここからだ。今回、ドラフト8位という評価でのプロ入りとなったがケガなく順調にいけば、必ず近い将来、1軍の試合でその姿が見られるはずだ。その時、多くのスカウト、そして獲得を見送った球団関係者がどう思うのか。

「だから、あれだけスカウトにも言ったのに……」

 と、山本監督と振り返る日が今から楽しみでならない。


文=谷上史朗(たにがみ・しろう)
1969年生まれ、大阪府出身。関西を拠点とするライター。田中将大(ヤンキース)、T-岡田(オリックス)、中田翔(日本ハム)、前田健太(広島)など高校時代から(田中は中学時代から)その才能に惚れ込み、取材を重ねていた。近著に『マー君と7つの白球物語』(ぱる出版)がある。


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