こんにちは、アライドアーキテクツの小川です。

前回の記事で、訪日観光客が急増しており、インバウンド施策はもはや「待ったなし!」のタイミングが到来しているとお伝えしました。

ただ、実際に具体的なマーケティング施策を検討・実施するためには、まずは観光客の消費行動実態についてより詳しく把握することが大切ですよね。

そこで今回は、「訪日前」「訪日中」の観光客の消費行動の今について、4つの質問形式にまとめて解説します。

「いつまでに」「何を」決めているの?

(図表:観光庁の平成27年7-9月期の「訪日外国人の消費動向」調査 図表1-8、1-10より一部抜粋)

観光庁の平成27年7-9月期の「訪日外国人の消費動向」調査によれば、アジアからの観光客は主に1~2ヵ月前にツアー商品や往復航空券を手配します。

旅行の手配方法は、往復航空(船舶)券や宿泊などを個別に手配する「個別手配」の割合が最も高く、つまり1~2ヵ月前には少なくとも「どこの都市に行くかを決め、航空券を手配している」と言えます。(中国、台湾は、他の国と比べ団体客の割合が高く、約4割を占めます)

(図表:DBJ・JTBFによる「アジア8地域・訪日外国人旅行者の意向調査(平成27年度版) P10より抜粋)

DBJ・JTBFによる「アジア8地域・訪日外国人旅行者の意向調査(平成27年度版)」によれば、宿泊施設についても、ほとんどの人が「訪日前」に決めています。訪れる観光スポットや観光地についても、全体でおよそ75~80%の人は日本に来る前に決定しています。

観光客を誘致したい観光地、宿泊施設は、各国の祝祭日・大型連休等の繁忙期に備え、その少なくとも1~2カ月前には『決定される』ことを念頭に置いて事前にプロモーションを実施する必要があります。

しかし、食事場所・レストランや買い物スポットについては、相対的に「日本に来てから決める」という人も多いようです。特に、食事場所については全体の約半分の人は日本に着いてから決めています。

つまり、レストランや買い物の施設については、訪日前プロモーションだけでなく、訪日中の観光客に対して何らかのアプローチを行うことも非常に大切と言えます。

(図表:博報堂「インバウンド・マーケティング・ラボ」の春節期における訪日中国人観光客の消費行動調査より抜粋)

一方、購入商品の決定タイミングについては、「訪日前」に既に決定している人が7割程度(博報堂「インバウンド・マーケティング・ラボ」の春節期における訪日中国人観光客の消費行動調査結果による)で、多くの場合、買い物リストは訪日前に作られているということが分かります。

この「買い物リスト」に載る為に、訪日前のプロモーションが非常に重要になると言えます。(ただし、ファッション製品、トレイタリーについては訪日後~店頭で決定している人が約半数います。また、本調査対象は中国・韓国・台湾・香港のみである点にも要注意です。)

どうやって情報を得ているの?

DBJ・JTBFによる「アジア8地域・訪日外国人旅行者の意向調査(平成27年度版)」によれば、訪日前の主な情報収集手段は、旅行ガイドブック、友人/家族、日本政府観光局のHP、個人ブログやクチコミサイト、SNSが挙げられます。

訪日前の主なプロモーション方法としては、「旅行ガイドブックへの露出/広告」「SNSを通じたプロモーション実施」「個人ブロガーへのアプローチ」「訪日経験のある人が友人/家族にクチコミをしてくれるための何らかの施策(キャンペーン、チラシその他)」が効果的と言えるでしょう。

訪日中の主な情報収集手段は、旅行ガイドブック、無料旅行情報誌(フリーペーパー)、観光案内所、無料パンフレット、ホテル・旅館の従業員、インターネット等が挙げられます。

訪日中の主なプロモーション方法としては、「フリーペーパーへの露出」「パンフレットの用意」「ホテル/宿泊施設へのアプローチ/連携」「クーポンの配布」が効果的と言えます。

もちろん、外国語での看板/ポスターやのぼり、店頭POPなども有効でしょう。

どこで買い物しているの?

観光庁の平成27年7-9月期の「訪日外国人の消費動向」調査によれば、買い物場所は「コンビニエンスストア(63.6%)」、「空港の免税店(63.0%)」、「百貨店・デパート(61.7%)」、「ドラッグストア(59.8%)」、「スーパーマーケット(53.6%)」の順となっています。

尚、DBJ・JTBFによる「アジア8地域・訪日外国人旅行者の意向調査(平成27年度版)」ではショッピングモールや観光地の土産物屋も上位に入っており、また、中国・シンガポール、マレーシアはショッピングモール、台湾はドラッグストア、香港はスーパーマーケット、百貨店など、国や地域によって差が見られるとされています。「特に中国、タイ、台湾については免税制度、外貨両替、カード決済等が今より利用しやすくなればさらに消費が喚起される可能性が高いと推察される」との報告にも要注目です。

観光客の多い買い物施設には「Tax Free」「銀聯カード可能」などの表示が入口に掲げられている様子をよく目にするようになりましたが、さらにそれをスムーズにするために
・全スタッフ(店員)への教育の徹底
・外国語が話せるスタッフの配置や外国人専門の相談カウンターの設置
なども検討に値するでしょう。

何を買っているの?

(図表:観光庁の平成27年7-9月期の「訪日外国人の消費動向」調査 図表4-3、4-4より抜粋)

観光庁の平成27年7-9月期の「訪日外国人の消費動向」調査によれば、日本滞在中に購入した商品やサービスのうち、「最も満足したもの」は、韓国は菓子類(21.5%)、台湾は「医薬品・健康グッズ・トイレタリー(18.7%)」。香港は「服・かばん・靴(32.8%)」、中国は「化粧品・香水」(19.3%)の割合が高いとの結果が出ています。

これらカテゴリーは、すでにニーズが顕在化しており、また満足度も高い結果となっているので、訪日前・訪日中のプロモーションをより有効に実施すれば、まだまだ伸びが期待できる分野であると言えます。一方で、既に観光客にとって「人気」となっているブランドも存在しています。よって、それらとの違いをきちんと打ち出してプロモーションを行い、また使用後に観光客にクチコミで自然に広めてもらえるような商品作りが不可欠です。

なお、現時点で観光客からあまり注目されていない分野のものについては、「ニーズの掘り起こし」から行う必要がありますが、逆に言えば競合がまだ少なく、そのカテゴリでのトップを取れる可能性を秘めていると言えます。

以上、今回は訪日観光客の消費行動の実態について、基本情報をまとめてお伝えしました。

但し、実際の消費行動を知るには、やはり現場を見に行くのが一番の近道。
週末、ぜひ観光客に人気のスポット(新宿、銀座、お台場、秋葉原など)に足を延ばして、買い物現場を観察してみてはいかがでしょうか?
アジアからの観光客の買い物への意欲に圧倒されるはずです!

本稿は、ソーシャルメディアマーケティングラボにて掲載された記事を転載したものです。

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