東京都・表参道の根津美術館は、松・竹・梅を題材とした絵画や工芸品のコレクション展「松竹梅 -新年を寿ぐ吉祥のデザイン-」を開催する。会期は2016年1月9日~2月14日(月曜休館、ただし1月11日は開館し、翌12日休館)。開館時間は10:00~17:00。入館料は一般1,000円、学生800円、中学生以下無料。

松鶴図屏風(左隻) 日本・桃山時代 17世紀 根津美術館蔵

同展は、松・竹・梅を単独に、あるいは組み合わせて描いた絵画や、それらをデザインした工芸品を展示するもの。正月になると街中にあふれる松竹梅の飾りと意匠だが、松と竹と梅とを組み合わせて、祝儀のデザインとして用いるようになったのは、寒い季節に耐える松・竹・梅を歳寒三友として愛した、中国の文人たちの思想がもたらされた結果であり、室町時代以後のことだという。

しかし、松・竹・梅は、それよりももっと古くから日本人の文化や生活にかかわってきている。門松は、もともと正月の歳神が祭場に降臨するための依代として立てられたもので、松の風格ある幹や枝ぶり、常に緑深い葉などに、ひとびとは神秘的な力を感じ取ったのだろうと推測される。兼好法師は「家にありたき木」として松を第一にあげているということだ。また、かぐや姫誕生の場面や、七夕かざりからも連想されるように、青々とまっすぐで凛とした姿の竹にも、霊性があると考えられていた。梅は、8世紀ごろ中国文化とともに入ってきた、この中では一番新しい樹木だが、花のない時期に、老木から生命が再生するように可憐な花を咲かせるさまは、それ自体、不可思議な力を感じさせる。同展は、こうした松・竹・梅の描かれたそれぞれの作品に込められる長寿の願いや祝意、あるいは松・竹・梅の霊性に対する人々の畏敬の念を感じ取ることのできるコレクション展となっているということだ。

染付色絵松竹梅文皿 肥前 鍋島藩窯 日本・江戸時代 17世紀 根津美術館蔵 山本正之氏寄贈

紅地松竹梅文振袖 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館蔵

白地青海波扇文縫箔 日本・江戸時代 17世紀 根津美術館蔵

また、関連プログラムとして、同館学芸部長による講演会「松竹梅の美術」が開催される。開催日時は1月30日14:00~15:30。参加に際しては往復葉書による事前申込が必要となる。申込方法の詳細は、同館Webページにて。そのほか、スライドレクチャー「百椿図」(1月15日)、「松竹梅」(1月22日)、が開催される。開催時間は各日13:30~約45分間。予約不要。

さらに、同時開催企画として、江戸時代の能装束を展観する「華麗なる能装束」も開催される。江戸時代に大名の公式行事となったため、色糸や金糸を用いた華麗な装束が発達した能の、能装束の優品約10点が展示され、ギャラリートークとして「展示室2 華麗なる能装束」も開催される。ギャラリートークの開催日時は2月5日11:00~約40分間。予約不要、10:00より同館受付にて整理券が配布される。

なお、講演会・スライドレクチャー・ギャラリートークとも聴講は無料だが、同館への入館料が必要となる。