昨年2014年10月に米国を皮切りにスタートしたAppleの決済サービス「Apple Pay」は、今年に入り7月に英国、11月にカナダとオーストラリアでサービスが開始された。米Wall Street Journalが関係者の話として伝えるところによれば、現在Appleは中国での同サービス開始に向けた動きを見せており、2016年の旧正月にあたる2月8日の前までにスタートさせたいと考えているようだ。

筆者が関係者の話として聞いたところ、Appleは地域ごとにApple Payローンチに向けた提供開始国の優先順位付けをしており、アジア太平洋地域で長らくオーストラリアが第1候補とされ、第2候補として中国が選定されているという話が出ていた。実際、オーストラリアはアジア太平洋地域で最も早い展開国となり、次なるターゲットとして中国の可能性が高いと考えられている。

一方で、中国は特殊な市場という事情もあり、政府による規制のハードルも見込まれるなど、実際にどのタイミングでサービスをローンチできるかは未知数だということも指摘されている。WSJによれば、実際に金融行政を管轄する政府機関らの承認をとれるかが、2月までのローンチの成否を握っているという。

現在Appleは中国の大手4行との交渉を進めており、実際の利用にあたっては、これら銀行口座とApple Payを結びつける形で利用することになるとみられる。WSJの記事中では中国工商銀行(ICBC)と中国建設銀行、中国農業銀行、中国銀行の、4行の名前が挙げられている。

ただ実際のところ、既存の4つの展開地域で利用されているPayPassやpayWaveといったカードブランドの提供するサービスが中国国内で利用できるかは微妙だ。筆者が実際に中国のいくつかの都市をまわって調べてみたが、一般的な商店やレストランでの利用はかなわなかった。

中国では銀行共通カードとして発行されているデビット方式の銀聯(ぎんれん)カード(China UnionPay)がほぼ市場を独占しており、Apple Payもまたこの銀聯カードに準拠したサービスを提供する形になるとみられる。一方で、Web等の電子決済の分野ではAlibabaのAlipayやTencentのTenpayといったサービスが広く利用されており、こうした事業者との提携もAppleには求められると考えられる。

いずれにせよ、中国でのApple Payの提供は既存のサービスとはやや異なるスタイルになるだろう。そして、ここでのサービス提供形態は将来的にやってくる日本でのサービスインの試金石になるはずだ。