IDC Japanは11月24日、国内エンタープライズストレージシステム(外付型ストレージとサーバー内蔵型ストレージの合計)のメディアタイプ別市場実績と2019年までの予測を発表した。これによると、フラッシュ技術を利用したI/O intensiveストレージの2014年の売上額は137億8000万円(前年比58.1%増)、2015年は196億3600万円(同42.5%増)が見込まれている。また、I/O intensiveストレージの2014年~2019年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は27.1%で、2019年には457億4500万円に達すると予測している。

国内エンタープライズストレージシステム(外付型と内蔵型の合計)市場メディアタイプ別売上額予測、2013年~2019年

同社ではエンタープライズストレージシステムをPerformance optimized(FC、SASのインタフェースを持ち、回転数が1万回転以上のHDDを搭載したシステム)、Capacity optimized(SATA、SASのインタフェースを持ち、回転数が7200回転以下のHDDを搭載したシステム)、I/O intensive(フラッシュなどのソリッドステートストレージを搭載し、主に高速なリード/ライトが必要とされる用途で利用されるシステム)の3つのメディアタイプに分類し市場実績の調査と予測を行っている。

2014年から2015年にかけては、国内エンタープライズストレージシステム市場においてフラッシュ技術を利用したI/O intensiveストレージの普及が本格化している。

高いI/O性能と低レイテンシーを特徴とするフラッシュストレージの普及が本格化したのは、データベースやデータウエアハウス/ビジネスインテリジェンス、Web、OLTPなどのアプリケーションにおいて、既存のPerformanceoptimizedストレージよりも高いストレージI/O性能を求める需要の拡大がある。また、サーバ仮想化やデスクトップ仮想化といった仮想化環境の普及とともに仮想化環境で利用されるストレージI/O性能のボトルネック解消が強く求められるようになってきたためだという。

2014年~2015年の大きな特徴はフラッシュデバイスのみを搭載したオールフラッシュアレイ(All Flash Array:AFA)の市場が国内でも急速に立ち上がってきたことが挙げられる。AFA市場は当初は新興ストレージベンダーを主体に立ち上がったが、大手ストレージベンダーが相次いで参入したことで市場の成長が加速。また、高速性が求められる「Tier 0(ティアゼロ)」市場に加え、汎用プライマリストレージの置き換えを狙う「Tier 1(ティアワン)」市場での需要が拡大し始めたこともAFA市場の成長を牽引している。

Tier 1市場での需要拡大を図るためAFAも高速性を追求するだけではなく、汎用プライマリストレージと同様にデータサービス(スナップショット、レプリケーションなど)機能の強化を進めている。また、I/O性能を向上させるだけではなく、システム設置面積の縮小、低消費電力化、サーバーやストレージのハードウェア台数の削減など複合的なメリットに着目してAFAを導入する企業が増加。

同社のエンタープライズインフラストラクチャ/IPDS/PCs グループディレクターの森山 正秋氏は「AFAは、特定のアプリケーションのI/O性能を高速化するだけのソリューションではなく、ハードウェアコストの削減、設置面積の縮小、電力コストの抑制などの複合的な経済効果により、国内企業のITインフラの投資パターンを変える可能性を持っている」と分析している。

同社では、2014年~2019年における国内エンタープライズストレージシステム全体の売上額のCAGRを1.3%と予測しているが、うちI/O intensiveストレージは27.1%、Performance optimizedストレージはマイナス12.4%、Capacity optimizedストレージは8.5%と予測している。