11月23日まで開催された「第19回名古屋モーターショー」に、日産「コンセプト2020 ビジョン グランツーリスモ」も出展された。東京モーターショーに続いての公開で、今回はブース中央に鎮座。完全に主役の扱いとなっていた。

名古屋モーターショーに出展された日産「コンセプト2020 ビジョン グランツーリスモ」

「コンセプト2020 ビジョン グランツーリスモ」(以下「コンセプト2020」)は、その名の通り、PS3用のレースゲーム『グランツーリスモ6』に登場する架空のモデルだ。このゲームの誕生15周年を記念した「ビジョン グランツーリスモ」プロジェクトから誕生した。

「GT-R」と連続性も - 単なる話題作りだけではない存在感

しかし、そのデザインは単にゲーム用に作られたものではない。英国の日産デザインヨーロッパ社が手がけたデザインは、自由に夢のスポーツカーを作るというスタディの一環からスタートしている。注目すべきはそのデザイン手法で、初期のラフスケッチから完成まで、すべての工程にデジタルデザインツールを駆使した。また、空力については綿密に計算されており、理論的な裏づけのある形状だ。

ゲームとコラボしたコンセプトカーとあって、話題作りのように見られてしまいがちだが、「コンセプト2020」はそれほど単純な存在ではない。日産のめざすスポーツカーの未来形、少なくともその候補のひとつといえる。実際、そのエクステリアは(他のコンセプトカーのように)現在の日産の市販車とかけ離れたものではなく、「GT-R」との連続性は明らかだ。

「コンセプト2020」は昨年、シルバーのボディで英国グッドウッド・フェスティバルに登場し、今年は真っ赤なボディとなって、東京モーターショーでジャパン・プレミアを果たした。東京では日産ブースの奥の奥、壁で囲まれたスペースに置かれ、まるで周囲から隠しているかのようだった。その「コンセプト2020」が名古屋モーターショーにもやって来たわけだが、その扱いは東京モーターショーと対照的。

広い日産ブースの中央、しかも奥のステージではなく、最も通路寄りの場所に置かれていたのだ。燃え上がるような赤のボディは、日産ブースだけでなく、会場全体から見てもひときわ目立つ。当然ながら観客の注目度はきわめて高く、周囲360度すべてにいつも観客が押し寄せている状態となった。

その光景は、これこそモーターショーという高揚感に満ちていた。近年、モーターショーは環境問題について考える場所のようになっているが、夢を見る場所としての楽しさを失ってはいけない。それを思い出させてくれた「コンセプト2020」こそ、本当の意味でのコンセプトカーといえるかもしれない。