気象庁は11月9日、東経137度線および東経165度線に沿った海洋内部の酸性化に関する解析の結果、両観測線とも北緯15度以北では海洋表面だけでなく海洋内部でも海洋酸性化が進行していることが確認されたと発表した。

海水は一般に弱アルカリ性を示すが、海水が大気中の二酸化炭素を吸収して酸性側に変化する「海洋酸性化」が近年、世界規模で進行しており、サンゴやプランクトンなどの海洋生態系に影響が及ぶことが懸念されている。

同庁は、海洋気象観測船「凌風丸」および「啓風丸」によって、北西太平洋域における二酸化炭素の観測を1984年以降行っており、今回、同庁保有の観測データに加え、国際的な観測データも取り入れ、1990年代以降における北西太平洋の東経137度線および東経165度線に沿った海洋内部における海洋酸性化の状況を初めて解析した。

この結果、当該海域の深さ約150~800mでは、海洋酸性化が進行していることが明らかになった。水素イオン濃度指数(pH)でみると、東経137度線では10年あたり0.008~0.025、東経165度線では10年あたり0.001~0.031低下しており、両観測線とも北部ほど速く低下する傾向が見られた。これは、亜熱帯北部ほど人為起源二酸化炭素蓄積量が多いことと整合しているという。

同庁によると、現在把握されている海洋酸性化によって、海洋生態系などに直ちに影響が出るわけではないという。しかし、このまま海洋酸性化が進むと、海洋生態系や水産業などに長期的に大きな影響が及ぶことが懸念されるとしている。

東経137度(左図)および東経165度(右図)の各緯度における海洋内部でのpH偏差の長期変化と両観測線の位置(中央図)