5インチディスクで2TBを達成 - 東京理科大が大容量ホログラムメモリを開発

 

東京理科大学は11月4日、新開発の情報記録方式「3次元クロスシフト多重方式」を採用することで、5インチサイズのフォトポリマーディスクと、小型かつ簡易な光学系およびメカ機構により、2TBのホログラム多重記録を可能とするメモリ技術を開発したと発表した。

技術の説明を行う東京理科大の山本教授

同成果は、同大 基礎工学部の山本学教授らの研究チームのほか、三菱化学、ナノフォトニクス工学推進機構、大日本印刷などで構成させる研究グループによるもの。

電子データの記録/保存については、米国を中心に公文書や映像・ニュースについては100年、医療情報は75年、オイル&ガス地層情報は50年といった長期での保存が求められるようになってきている。しかし、現状、記録媒体として用いられているHDD、磁気テープ、光ディスク、半導体メモリなどは、大容量、長期信頼性、自然災害などへの耐久性、運用コストの低減などのすべての条件を同時に満たすことが難しく、新たなメモリ技術の実用化が求められていた。

今回、山本教授は、安定な記録および再生を可能とする新方式「3次元クロスシフト多重方式」を発案した。同方式は、信号光と球面参照光を媒体の中で反応させて記録させるというもので、膜厚を利用して、ホログラフの干渉縞の方向(角度)を変えてやることで、同一箇所にそれぞれ独立したホログラフを多重に記録させることが可能。また、約10μmほど媒体をシフトさせてやるだけで、以前の場所に記憶されたホログラフが認識できなくなり、クロストークもない、ということで容量を手軽に増やすことができることを確認。実験では、5インチのガラス基板のディスクの全域に記憶を行い、約2TBの容量を、シンボルエラー率10-4台(65分割)で実現できることを確認したとする。

従来技術と今回の技術の比較。角度多重記録方式の場合、角度は0.1度ずつだが、その制御の精度は0.01度以下と、1桁異なる精度が求められ、メカニカルな機構での実現が難しかった。一方のコリニア方式はスペクトルパターンを用いるが、光学系を変更した際に、同じスペクトルパターンを出せない場合があり、媒体の互換性という観点で課題があった。今回考案された方式は、そこまで制御精度が必要なわけでもなく、媒体互換性の確保も容易であるという

同じ場所に角度を変えることで、別の情報を記録させることが可能

同じ場所に角度を変えることでも別の情報を記録させることも可能

こうした技術を組み合わせると、1つのホログラム(0.5mmの円)あたり1Mビットながら、5.5cm長で10μmシフトだと5500個となり、さらに5度間隔での傾きを左右で行い6多重化すると、合計33Gビット(4.1GB)の容量が実現される

この実験系は、光源に青色のレーザー光源を採用しているほか、空間光変調器は画素数が縦横ともに2000以上、画素ピッチは7.8μm、最高フレームレートは1000fps以上、CCDは画素数が縦横ともに2700以上、画素ピッチが5.79μm、最高フレームレートが750fpsとしているが、それ以外のディスクの角度を制御する機構などは非常にシンプルで、小型化も容易に行えるものとの考えを山本氏は示しているほか、基本的なターゲットはニアラインとオフライン領域であるが、フレームレートを今後、高速化できればデータの転送レートもさらに向上されることから、「HDDを超す高速化も可能になるとの見込み」とのことで、アクティブアーカイブ領域での活用も可能になるとしている。

実験系の構成を写した画像。実用化には、これをいかに小型化するか、というところもポイントとなる

また、研究としては、重なり合うホログラフの間隔が10μm未満であっても、隣接するホログラフは認識されないため、高密度化を図ることでの大容量化が可能になるとする。

従来のメモリ技術各種と今回の技術の優位性比較

ちなみに現時点での実験系のサイズは30cm角程度とのことで、実用化のためには、サーバルームに導入できるサイズ(5インチの光学ディスクドライブ)に小型化する必要があり、これまで共同研究を行ってきた三菱化学や大日本印刷のほか、そうしたドライブメーカーなどとも研究開発を行っていく必要があるとの見方を示しており、広く、協力してくれる企業を募っていきたいとしている。

実際に5インチサイズの全面に記録が施されたホログラムメモリディスク。右の画像がわかりやすいが、記録データは縞状の模様となって書き込まれている。ちなみに現状の材質はTFT基板クラスのガラスで、ポリマーを挟み込み、端を封止することで、水分の侵入などを防いでいる。記録速度は1Gビット/sがターゲットとのことで、「テープメディアのスピードを超すことを目指している」(山本教授)としている

なお、山本教授としては、2020年の東京五輪開催に伴って用いられるであろう高精細な映像のアーカイブを第一ターゲットとして、まずは2TBで商用化を目指すとしているが、現状の2値記録方式から、多値記録方式に増やしたり、多重記録の回数を現状の数百から数千にできる材料の開発などを行っていくことで、2030年ころには100TBまでは行けるのではないかとしている。



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