早稲田大学は11月4日、11月2日に行われた小保方晴子氏の博士学位の取消しに関する記者会見の直前に代理人を通じて発表された小保方氏のコメントを受けて、同大学としての見解を文書にて示した。

1.「前回の学位は正式な審査過程を経たうえで授与されたもので、今回の訂正論文が博士に値しないとされたことは、前回の授与時判断と大きくかい離する結論である」という小保方氏の主張に対して

同大学は、2014年10月6日付で小保方氏に授与された学位を取り消したが、同大学先進理工学研究科側にも不備・欠陥があったとして、猶予期間を設け、再度の論文指導などを行ったうえで、本来提出されるべきであった論文になるよう訂正を求めていた。

文書において同大学は「2011年に実施された学位審査の基準と今回の決定に至る論文訂正の水準は、本質において何ら変わることなく、ただ『博士学位にふさわしい』論理的説明が科学的根拠に基づいて行われているかという点に尽きる。今回の論文指導は、小保方氏の事情によって十分な時間を取ることができず、指示された訂正作業を完了できないままに猶予期間が満了するに至ったということであり、本学として審査の基準を変えたわけではない」という見解を示している。

2.「担当教官によって『今回は合格する可能性はとても低い』と伝えられ、不合格の理由においても審査教官から『博士として認めることのできないのは一連の業界の反応を見ても自明なのではないか』とのコメントがあり、学術的な理由ではなく社会風潮を重視して結論を導いた」という小保方氏の主張に対して

これらのコメントについて、同大学は「前後の文脈を無視した引用である」と主張。「前者は、指導教員が最初の面談で、『提出すれば必ず合格するというわけではないので、合格できるよう修正していきましょう』と言ったことを指していると推定される。後者は、『不明瞭な疑惑がひとつでもある場合、またそれを解消する姿勢が著者に見られない場合、信頼できる博士および論文として認めるのは難しいことは、昨年の一連の業界の反応を見ても自明なのではないか』という改訂稿に対する指摘の一部だと思われる」としている。

3.「入院中、加療中で思考力・集中力などが低下している状態での修正作業となり、博士論文に能力を発揮できる健康状態ではないとの診断書を大学に提出。心身への状況配慮などは一切なされなかった」という小保方氏の主張に対して

同大学は、小保方氏より診断書が2回提出されたことを認めたうえで、「論文指導が小保方氏の健康状態に大きな影響を与え、取り返しのつかない状況に至ることを慮り、それゆえに医師の診断結果を考慮しながら対応することを常に心がけてきた」とコメントしている。なお、2回目の提出は同大学より依頼されたものだという。

4.「修正論文提出後、一回のやり取りだけで不合格の判定をされ、それに対する意見も聞く耳を全く持たない状況であり、当初から不合格を前提とした手続きであった」という小保方氏の主張に対して

記者会見において同大学は、「メール、電話などで本人の体調を考慮しながら十分な指導を行った。また、2名の教員が3度直接訪問し面談を実施するなど、できることは十分にやってきた」としている。なお、小保方氏からは最初の草稿以降に3回改訂稿が提出されたという。

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同大学は文書において、「両者の努力が十分な結果を得るに至らないまま猶予期間が満了してしまった。それは、教育の場としての本学にとっても辛い結果ではあるが、これは学問の府として揺るぎない基準をもって博士学位にふさわしい論文を評価するとの姿勢の帰結でもある」と、再度今回の学位取り消しの決定についての見解を示した。なお、小保方氏と争うことは考えていないとしている。

11月2日の記者会見の様子。左から 早稲田大学教務部長 古谷修一氏、教務担当理事 佐藤正志氏、総長 鎌田薫氏、副総長・学事統括 橋本周司氏