9月のFOMCがハト派的であったのに比べ10月のFOMCはタカ派的であったと見られます。ただし、利上げ賛成票は一人と前回と変化が無く、即座の行動よりは12月を含め次回以降のFOMCの利上げの地均しをしたとも見られます。

FOMC:声明はタカ派的。経済は緩やかなペースで拡大、12月会合で「利上げ」検討も

米連邦準備制度理事会(FRB)は2015年10月26、27日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)後の声明で、政策金利は事実上のゼロ金利を据え置きました。一方、声明の内容は次回12月の会合での利上げの検討に言及するなどタカ派(金融引き締めを選好する傾向)的でした。その結果フェデラルファンド(FF)金利の動向を示唆する先物市場では、12月利上げ開始を予想する観測が高まり、声明公表前は3分の1程度であった12月利上げ開始確率が、声明公表後には約46%程度と半数近くにまで上昇しました。

どこに注目すべきか:10月FOMC声明、VIX指数、家計支出

前回、9月のFOMCがハト派(金融緩和を選好する傾向)的であったのに比べ、10月のFOMC声明はタカ派的であったと見られます。ただし、利上げ賛成票は一人と前回と変化が無く、即座の行動よりは12月を含めた次回以降のどこかのFOMCでの利上げの地均しをしたとも見られます。

まず、10月のFOMCがタカ派的と見られるのは次の3点です。1点目は、声明の中で最近の新興国の混乱が米国経済やインフレ率を低下させるとの懸念を示唆する文言を削除し、今後は市場を注視すると変更したことです。これは市場の混乱を知る上で一つの目安であるVIX指数(ボラティリティ・インデックス)が8月の中国の人民元引下げなどを受けた株式市場の下落で急上昇したものの、足元でVIX指数が15程度に落ち着いてきたことと整合的と思われます(図表1参照)。

2点目は、米国景気の認識を上方修正したことです。特に家計支出と設備投資が前回の緩やかなペースから堅調へと表現が上方修正されています。市場でも、10月29日に公表される米7-9月期GDP(国内総生産)の予想値を見ると、全体では純輸出の低下などを受け低下が見込まれていますが、個人消費は底堅い動きが予想されています(図表2参照)。

3点目は、声明に次回会合でFF金利の誘導目標の引き上げが適切かどうかを判断するといった表現が見られることです。この意味は12月利上げを予告したものではないと見られますが、それでも積極的な利上げ検討を想定させる表現と見られます。ただし、声明では雇用統計で非農業部門雇用者数の回復が鈍いことを指摘したことや、世界経済の影響の表現を変更したこともVIX指数の低下を見れば、むしろ声明内容は、中立で冷静な面も見られます。

FOMCメンバーが望ましいと考える利上げ時期は今回公表されていませんが、仮に9月と同様の傾向ならば年内利上げが多数派と想定されます。一方、先物市場に反映される利上げ時期の確率(もっともこの「確率」は先物市場参加者の見方を反映している点に注意は必要)では10月FOMC前、年内利上げ確率は少数派となっていました。仮にこのまま市場とFOMCの認識にギャップがあったままで利上げをすれば市場の変動が高まるリスクも懸念されるため、ギャップを埋めることで12月も含めた利上げ開始の準備を進めたものと思われます。

出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

●ピクテ投信投資顧問が提供する、「今日のヘッドライン」からの転載です。