東京・北の丸公園にある科学技術館は10月23日、1964年の開館以来の来館者数が累計で3000万人に達したと発表し、併せて記念式典を開催した。2007年5月に2500万人を達成しており、約8年で500万人が来場したこととなる。

東京・千代田区 北の丸公園にある科学技術館。1964年4月に開館され、今年で51年目となる

記念すべき3000万人目は、神奈川県在住の小学2年生の男児を伴った2組の家族。同日開催された記念式典にて、2015年7月より館長に就任した2001年のノーベル化学賞受賞者でもある野依良治氏より、同氏直筆のメッセージが記されたサイン入り色紙と花束が贈られた。また、2名の男児には副賞として、知育玩具「アイキューキー」ならびに「生涯有効の科学技術館入館チケット」が進呈された。

館長の野依氏は、「本日、式典に参加してくれた2名の男児が3000万人ではあるが、それまでにたくさんの来館者がいたからこそ達成できた数字。そうしたこれまで来館してくれた人たちにも感謝したい。日本は産業立国であり、これがなければ国として成り立たない。国土も狭く、資源も少ないが、科学の力は本当にすごい。21世紀以降で見れば、ノーベル賞受賞者数は米国に次いで2位。英国やドイツなどの科学大国よりも高い評価を受けているのは誇ってよいこと。科学がもとになって技術が生み出される。そのためにも、それを生み出していく人を育てていく必要がある」という観点から科学技術館が若い人の育成に向けた役割の一翼を担ってきたと説明。

また、開館と時を同じくして開催された東京五輪にも触れ、「当時は新幹線が開通し、テレビが普及を始めるなど、人々のライフスタイルが変化し始めた。近年の五輪を見ても、科学と技術の塊。そうした意味でも、2020年の東京五輪も、技術革新の機会である」とする一方で地球が有するエネルギー資源が、人間の社会活動により消費され続けることによる枯渇懸念や気候変動にも言及。「今の人々の生活は、資源やエネルギーを、来館してくれた子供たちのさらに先の世代から許可なく借りて使っている、いわば借金生活の状態。そうしたことを踏まえて科学を考えなければいけない。科学からエネルギーや資源に関する技術が生み出されていくことで、限られた地球の中で人類が継続して生きていくために貢献していけるのではないかと思っている」とし、「若い人たちがそういったことを知ったうえで、たくましく、しなやかに生きていってもらいたい。科学技術館としてもそうした子供たちの力になっていきたい」と今後の科学技術館の向かうべき方向性を示した。

さらに同氏は今回の3000万人という数にも言及。「ここで終わりではなく、これからどうするかというのがある。私としては、今後10~20年で3000万人(累計6000万人)を達成し、そうして来館してくれた子供たちの中から新たな技術が生み出されていく、そうした手伝いを科学技術館として進めていきたい。子供たち、頑張って」と未来を担う子供たちにエールを送ってくれた。

なお、科学技術館では来館3000万人達成を記念して、2015年10月24日から同年11月23日までの土・日・祝日に来館する子供たち(4歳から高校生まで)を対象に、各日先着100名に、50周年記念マークと科学技術館の名前を入れたフィールドノート(野帳)を記念品としてプレゼントするキャンペーン行うとしている。

3000万人目を達成した小学2年生男児2名と、科学技術館館長の野依良治氏。式典の終了後に、野依氏と子供たちが間近に触れ合う姿も見られた。ちなみに、野依氏が2人の色紙には「科学とは果てしない知の旅である」としたためられていた