訪英中の習近平中国国家主席とキャメロン英首相は21日、共同記者会見で中国の国有企業が英国の原発建設に協力することで合意したことを明らかにした。

BBC(英国放送協会)によると、協力対象の一つは英国南西部のサマセット州にあるヒンクリー・ポイント原発サイトに建設が予定されている原発。習国家主席とキャメロン首相は、フランス電力公社(EDF)と中国広東核電集団有限公司(CGN)との間で合意された投資合意書に署名した。EDFは総建設コストの3分の1に当たる60億ポンド(約1兆1千億円)をCGNが支払うと言っている。

ニュース配信サイト「47news」は、ロンドン発の共同通信電として、中国の出資が決まった原発は2025年に完成の予定と伝えた。建設の主体となるEDFは、英南東部のエセックス州で中国が進める原発建設を支援することでも中国側と合意し、欧米で初となる中国製原発の導入が近づいた、としている。

日経新聞22日朝刊の記事によると、エセックス州に建設が予定されているのは、中国の「華龍1号」と呼ばれる原発。フランスからの技術供与を受けて開発されたが、「主要部品の国産化率は85%を超えている」とCGNは言っているという。

中国の原発事情に詳しい海外電力調査会参事、渡辺搖(わたなべ はるか) 氏は、9月28日に科学技術振興機構中国総合研究交流センター主催の研究会で講演し、次のように語っている。

「華龍1号は、原子炉容器、蒸気発生器、一次系ポンプを連絡している配管が3系統ある3ループ加圧水型炉。2014年12月5日に、国際原子力機関(IAEA)の原子炉安全設計審査で承認されたことが記事になった。中国に知財権があるということを言いたかったのかもしれない。華龍1号を造るに当たっては中国核工業集団公司(CNNC)と中国広東核電集団有限公司(CGN)が力を合わせてやらないといけない、と中国国内では言われ続けていた。CGNの方は『3ループ加圧水型炉を中国国内では自由に造ってよい』という許可をフランスから得ており、一方のCNNCは、中国の外でも建設できる権利を持っているという。運転経験や製造実績から言うとCGNの方が上だが、外に持ち出せる権利はCNNCが持つので、二者一緒の必要があるということかもしれない」

さらに「華龍1号は第3世代炉だ、と中国が一生懸命宣伝しているのが昨今の状況」とも、渡辺氏は言っていた。第3世代炉というのは、炉心損傷確率および大規模な放射性物質放出事故の発生確率が、第2世代炉の10分の1以下という新しいタイプの原子炉。日本で営業運転となった第3世代炉に相当する原発は、改良型沸騰水型(ABWR)炉が4基あるだけだが、中国では、フランス、米国、ロシアの技術をそれぞれ導入した第3世代炉あるいは第3世代炉とみなされる原発の建設が進んでいる。

今回の中英首脳会談での合意について、渡辺氏は「英国の原発はほとんどガス冷却炉で、新規原発は軽水炉にせざるを得なく、外国から導入するほかない。中国はフランスと共同開発をしており、資金の問題もあって、今回の合意になったのだろう。英国が原発建設にかなり前向きで、むしろ切羽詰まっているということではないか」と語っている。

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