現在開催中(11月3日まで)のデザインをテーマとしたイベント「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2015」(東京ミッドタウン デザイン タッチ 2015)において、目でフォントを描く「eyeFont」の体験展示が実施されている。展示時間は12:00~19:00。会場は東京ミッドタウン ガレリア3F TIME & STYLE 前エリア。参加無料。

「eyeFont」の装置。あごを載せてPCの画面を見つめ、視線でフォントを書く作品だ

「eyeFont」(セミトラ制作)は、その名の通り人の視線でフォントを作り出すことができるアート作品(山口情報芸術センター(YCAM)委嘱作品)。体験する人は事前に文字列(アルファベット)を指定し、表示されたガイドラインを視線でなぞることで文字を書いていく。

こう説明するだけなら簡単だが、なかなかどうして、「思った通り」になぞるのは非常に難しい。筆者も体験してみたが、ふだん何気なく行っている「文字を書く」という行為を"身体抜き"で、正確に言えば目の動きだけで行うのは未知の体験で、実に難しかった。視線を文字の軌跡どおりに動かしているつもりでも、なかなか筆順を進められなかったり、逆に明後日の方向へ書きすぎたりしてしまう。

今回のイベントのメインビジュアルは、この「eyeFont」で描いた文字列を採用している

そうして書き終えた文字列がこちら。1文字書くのにもかなり格闘したので、正直、もう少し少ない文字数にしておけばよかったと後悔するくらいには疲労した。アテンドしてくださったYCAMのスタッフの方は「上手に書けた部類に入る」とフォローしてくれたものの、正直、体験していない人が見たら、足の指でペンを握って書いた文字と思われてもおかしくない。

「MYNAVI」と書いてみた。MやNの比較的正確な筆跡と、最後のIの躍動感のコントラストが印象的な一筆となった。

書いたフォントは自動で「eyeFont」のWebサイトにアップロードされ、pngファイルとしてダウンロードする、あるいはTシャツ化の手続きが行える。手軽に「自分だけのフォント」を記念にとっておけるので、複数人でトライして、その難しさと各々の文字の個性を共有すると、より楽しめそうだ。

なお、この作品の基幹システムは、YCAMが開発に携わったオープンソースの視線入力装置「The EyeWriter 2.0」。ALS(筋萎縮性側索硬化症)により全身がまひした米国のグラフィティアーティスト・TEMPT1が再び絵を描けるように、という動機から始まったプロジェクトで、「eyeFont」はこの装置を活用して作られた作品のひとつとなっており、その他の関連作品なども、YCAMのアーカイブページにて見ることができる。

「The EyeWriter 2.0」

ふだん当たり前と思っている行為の難しさ、制御できないことの「面白さ」を体感できる展示となっていた。会期中は12:00~19:00まで体験可能となっているので、興味を持った人はぜひ足を運んでみてほしい。