マラリア原虫の薬物耐性の原因となるタンパク質の働きを分子レベルで、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の森山芳則(もりやま よしのり)教授、表弘志(おもて ひろし)准教授、樹下成信(じゅげ なりのぶ)助教らが初めて突き止めた。マラリアの新薬開発など治療を前進させる新しい手がかりになりそうだ。3月2日付の米科学アカデミー紀要オンライン版に発表した。

図.掘削地点(提供 海洋研究開発機構などの共同研究グループ)
東北地方太平洋沖地震の震央、巨大地震発生域、ゆっくり地震発生域の分布を示す。掘削地点(C0019)の海底面下約820mから採取されたプレート境界断層試料が実験に用いられた。

海洋研究開発機構海洋掘削科学研究開発センターの研究グループが、ドイツのブレーメン大学、京都大学防災研究所、筑波大学と共同で、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の前に観測された「ゆっくり地震」を室内実験で再現することに成功した。甚大な被害をもたらす巨大地震のメカニズム研究を進める研究成果で、英国科学誌に掲載された。

通常の地震では、岩盤が数秒から数十秒間で急速に滑るが、ゆっくり地震は、数日から1年以上かけてゆっくり滑る。最近、巨大地震発生との関連が注目されている。研究グループは「今回の研究成果により、プレート境界の断層浅部では、ゆっくり地震のゆっくりとした滑りと、巨大地震時の高速での滑りが同じ断層で起こり得ることが実証された。今後はゆっくり地震の発生域であるプレート境界の断層浅部も巨大地震の震源域に含める新たな巨大地震モデルを検討する必要がある」としている。

実験に用いた試料掘削は「統合国際深海掘削計画(IODP)」の一環として2012年4月1日から5月24日の間に実施され、地球深部探査船「ちきゅう」によりプレート境界断層浅部から採取された。これまで同じ試料を用いた別の室内実験で地震時の高速滑りが再現され、地震時の断層滑りのメカニズムが明らかになっている。

2011年 3月11日に発生した大地震では、プレート境界断層浅部が大きく滑ることで大規模地殻変動が生じ、その結果巨大津波が発生した。一方、この領域では大地震前にゆっくり地震が発生していたことが、海底に事前に設置されていた圧力計や地震計記録などから明らかにされ、研究者の間で注目、議論されてきた。

研究グループは今回、プレート境界断層から採取された試料を実際のプレート沈み込みとほぼ同じ環境で変形させて、ゆっくり地震が発生するか調べた。実験では、太平洋プレート沈み込み速度(毎年間8.5センチ、秒速に換算すると毎秒2.7ナノメートル)で試料を滑らせた。すると、摩擦強度(応力)が増加し、その後減少するという現象が起きた。実験で計測された応力降下量、応力降下に要する時間、滑り速度は、いずれも世界の沈み込み帯で実際に観測されているゆっくり地震時のものとほぼ同等だった。これは沈み込み帯で発生するゆっくり地震を再現したことを意味する、という。

ゆっくり地震は、通常の地震よりもプレート(岩板)の境界や断層面がゆっくりした速度でずれるタイプの地震。多くの場合大きな揺れは生じさせない。このタイプの地震では、地震が起きた部分のひずみは減る。しかしプレートや地殻は広範囲でつながっているため、別の場所でひずみを蓄積させる原因ともなる。東日本大震災では、プレートの深い部分でゆっくり地震が発生し、浅い部分でひずみがたまり、その現象が巨大地震につながった、とされている。

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