株式の評価、弱気から中立へ

先月やや弱気に引下げた株式の評価を中立に戻します。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ観測が遠のき、相場が世界経済に対する不透明感を次第に織り込みつつあるためです。また、米国の利上げ先送りによって今まで売り込まれていた新興国や資源国通貨に買い戻しが入りやすくなっていると考えられます。

利上げと利上げ以外の注目材料

9月17日、FRBは中国など新興国経済を取り巻く不確実性の高まりやドル高の影響に配慮して利上げの見送りを決定しました。

その後、10月2日に発表された9月の米国雇用統計で新規雇用者数の伸びが市場の予想を下回る低調な内容となり、12月の利上げさえ難しいとの見方から、雇用統計発表当日の午後から世界的に株価が上昇に転じました。しかし、世界経済の基調は崩れておらず、今後の経済指標次第では利上げ観測が再び高まることは十分にありえます。

目まぐるしく情勢が変わるなか、米国の利上げ以外にも注目すべき点があります。

(1)中国

中国の李首相は一段の人民元安は望まないと表明し、自動車税の軽減や住宅ローン規制の緩和策を新たに打ち出しました。中国が通貨安に頼らず景気浮揚を目指すのであれば相場にとってプラスです。

(2)中国の経済成長見通し

世界銀行や国際通貨基金(IMF)が経済成長見通しを相次いで発表し、今年の中国の成長率をそれぞれ6.9%、6.8%としました。この見通しに込められたメッセージは、中国経済が構造的な調整局面を迎えているのは間違いないが、急減速するわけではないということです。

(3)日本

安倍政権がアベノミクス第二弾を打ち出し、名目GDP600兆円を目指すと発表しました。また、環太平洋経済連携協定(TPP)が大筋合意に至ったことや景気浮揚を目指した補正予算が近く発表されると見られることから、日本経済に対する期待が再び高まる可能性があります。

下手な難平(ナンピン)、怪我の元

これらの変化を踏まえれば、もはや過度に相場に警戒する必要はないと思われますが、本格的に市場が反発するには市場の価格変動率が低下し、投資家がリスクを取りやすくなる環境が必要でしょう。

それまでは迂闊に難平買い(平均買いコストを引下げるため、下値で新たに買うこと)を入れるのではなく、慎重に買いタイミングを見極めたいところです。

「下手な難平、怪我の元」という相場格言は、プロ・アマ問わず、多くの投資家にとって今なお傾聴すべき貴重な教訓です。

●ピクテ投信投資顧問が提供する、「ボンジュール」からの転載です。