初めてのシングルA格

9月16日、米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は日本国債の格付けを「AA-」から「A+」に1段階引き下げると発表しました。 見通しは「弱含み(ネガティブ)」から「安定的(ステーブル)」に変更しています。S&Pが日本の格付けをシングルA格としたのは初めてです。これでフィッチ、ムーディーズ・インベスターズと主要格付け会社3社がそろって日本を格下げしたことになります。

■日本の長期債格付け(S&P)の推移(期間:2000年12月~2015年9月)

出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

市場の反応

しかし、今回の格下げによる為替や市場の反応は限定的なものでした。既にS&Pが見通しをネガティブとしていたことや、他の格付け会社がシングルA格としていたこともあり、今回の格下げはある程度想定されていたようです。

なお、他国と比較すると、「A+」のアイルランドと同水準で、「AA-」の中国や韓国より悪くなります。

格下げの背景

今回の格下げには3つの背景があると考えられます。

(1)アベノミクスへの厳しい評価

アベノミクスにおける経済政策が日本の信用力を高める程の効果は発揮しておらず、今後2、3年で信用力が好転するほど経済が改善する可能性は低いとS&Pは判断しています。

(2)財政状況の悪化

2008年の金融危機の後、日本の財政は悪化傾向が続いているとS&Pは分析しています。

消費増税効果や税収増を勘案しても、一般政府純債務残高の対GDP比は2018年度には135%程度に上昇するとの見方を示しています。

(3)日銀の出口戦略

異次元緩和を続ける日銀が出口戦略に踏み切れば金利は上昇し、財政をさらに圧迫する懸念も考えられるとS&Pは指摘しています。

ただし、S&Pは日本の政策運営の安定性、潤沢な対外資産、分散化された経済構造などは信用力を下支えする要因として評価しており、当面は日本の財政状況を背景とした国債市場の混乱は想定していないようです。

●ピクテ投信投資顧問が提供する、「ボンジュール」からの転載です。