(C)うだま

深夜リビングで本を読んでいると、遠くから何かが落ちる音が。あなたが猫と暮らしているのであれば驚く必要はありません。ほとんどの場合、泥棒ではなく猫による仕業だからです。

あなたの家の猫だけでなく、世界中の猫が同じ行動をします。ある猫は1つずつ順番に落とし、ある猫はまとめて落とし、ある猫は落としたものを人間が戻すのを待っています。この人間にとっては不都合な習性(?)をするのは主に3つの理由が考えられます。

1物理法則を学習している

特に若い猫にこの行動がみられます。単に好奇心が強いからと説明するのは簡単ですが、私は、この行動からものの動き方を学習していると考えます。猫は落とした後に必ず身を乗り出して目で追いかけ、落とした対象物がどのような動きをして落ちていくのか観察しています。

若い猫は経験が少ないのでいろいろな硬さ、重さの物を落としどのようなスピードで落下し、軌道を描くのかを学んでいるのでしょう。

2刺激が欲しい

例え狩りをする気がなくても、目の前で猫じゃらしを動かされると目を丸くし飛びつきたくてムズムズしてきます。猫は本能的に動く物が大好きですが、室内には動く物がなく刺激がありません。

そのため、物を落とし大きな音とともに落下していくものを見ると本能が刺激されるのでしょう。余りに物を落とす猫は、遊ぶ時間が足りない可能性もあります。レーザーポインターやおもちゃでたくさん遊び、猫の欲求を満たしてあげましょう。

3呼び鈴代わり

「物を落とす→飼い主が駆けつける」という流れを覚えた猫は、呼び鈴代わりに物を落とすこともあります。より賢い猫はフードが入っている場所の近くで大きな音をたてご飯を頂戴と伝えることもあります。

お腹が空いた時はニャアと鳴けば良いと思うのですが、ニャアより物を落とした方が飼い主が慌てて駆けつけることを知っているのでしょう。ご飯だけでなく、なでてほしい、構ってほしいアピールの場合もあります。人間の子供と同じように、悪いことをすることで注意を引いているのです。

まとめ

猫は決して、飼い主さんを困らせるために物を落としているのではありません。その行動の背景には、今回紹介したような猫なりの心理が隠れています。物を落とさないでほしいとよく相談されますが、一番良くないのは叱ることです。猫は叱っても省みないため、猫との関係が悪化するだけでしょう。遊び不足か、甘やかしすぎたか、構ってほしいのか、愛猫がどんな理由で物を落とすのか考えてみましょう。

■著者プロフィール
山本宗伸
獣医師。Syu Syu CAT Clinicで副院長を務め、現在マンハッタン猫専門病院で研修中。2016年春、猫の病院 Tokyo Cat Specialistsを開院予定。猫に関する謎を掘り下げるブログnekopediaも時々更新。