理化学研究所(理研)は9月15日、生体組織を抗体や色素で染色し微細構造を保ちながら透明化する新しい技術を確立したと発表した。

同成果は理研脳科学総合研究センター細胞機能探索技術開発チームの宮脇敦史 チームリーダー、濱裕専門職研究員、並木香奈研究員らの共同研究グループによるもので、9月14日付けの国際科学誌「Nature Neuroscience」オンライン版に掲載された。

理研の細胞機能探索技術開発チームは、生物サンプルを透明にする尿素含有試薬を2011年に開発し、サンプルを傷つけることなく表面から数ミリの深部を高精細に観察できる技術を開発していた。しかし、同技術は理時間が長く組織が膨潤してしまうなどの問題点があった。

同研究グループは今回、尿素と糖アルコールの一種であるソルビトールを主成分とする新試薬を開発。より速く透明化し、より本来の微細構造を保つことができるように改良した。さらに、3次元組織を抗体や色素で染色する新技術を、従来技術と併せることで、アルツハイマー病モデルマウスの加齢脳やアルツハイマー病患者の死後脳における組織病変をさまざまな空間解像度で定量的に観察することに成功。その結果、アルツハイマー病の早期に生じるアミロイド斑の炎症性の特徴を明らかにすることに成功した。

今後、今回開発した透明化技術を用いることで、アルツハイマー病をはじめとする多くの脳疾患の組織病変の詳細な解析が可能となることが期待される。

生後10週齢のマウスの大脳を2つの半球に分け、片一方に処理を施した(図上左)。図上右は、リン酸バッファ(PBS(-))に浸漬したままの半球。透明脳半球から切り出したスライスは歪むことなく直立した(図下)。