米Intelは9月2日、"Skylake"アーキテクチャをベースとしたCPUを46モデル発表した。すでにDesktop向けのCore i7-6700KとCore i5-6600Kを8月に発表しているから、これを合わせると合計48製品という計算になる。

まずは既存モデルも含めたSKUをご紹介しておく。

  • Desktop向けCore i5/i7(TDP 91W)2製品(Photo01)※すでに発売済み
  • Desktop向けCore i3/i5/i7(TDP 47/65W)7製品(Photo02)
  • Desktop向けPentium(TDP 47W)3製品(Photo03)
  • Desktop向けCore i3/i5/i7(TDP 35W)6製品(Photo04)
  • Desktop向けPentium(TDP 35W)2製品(Photo05)

Photo01:こちらはすでに発表されているDesktop向けのK SKUだが、改めてスペックが示された

Photo02:65W SKU。といってもCore i3は47Wとなる

Photo03:Pentiumはすべて47W

Photo04:低電圧のTモデルは35W

Photo05:PentiumもTモデルはやはり35W

  • Mobile向けXeon(TDP 45W)2製品(Photo06)
  • Mobile向けCore i3/i5/i7(TDP 35/45W)Hシリーズ7製品(Photo07)
  • Mobile向けCore i5/i7(TDP 15W)Uシリーズ8製品(Photo08)
  • Mobile向けCore i3/Pentium(TDP 15W)Uシリーズ2製品(Photo09)
  • Mobile向けCore i3/i5/i7(TDP 28W)Uシリーズ4製品(Photo10)
  • Mobile向けCore m3/m5/m7/Pentium(TDP 3.5~7W)Yシリーズ5製品(Photo11)

Photo06:Mobile向けXeonは、2015年秋の投入ということだけが発表されていた。搭載製品もすでにLenovoから発表されている。Mobile向けはDDR3L/DDR4メモリに加え、LPDDR3メモリもサポートされる

Photo07:Mobile向けのHシリーズは、Core i3のみTDP 35W

Photo08:こちらのUシリーズはいずれも定格はTDP 15W。Configurable TDPを使うと7.5W/9.5Wまで下がる

Photo09:Uシリーズ続き。不思議なことにPentium 4405UのみConfigurable TDPを使っても10Wまでしか下がらない

Photo10:同じくUシリーズだが、こちらはTDPが28Wのモデル。グラフィックスにはIrisが統合される

Photo11:Core mはPentium Yまで含めると5製品。Core mブランドとしては"第2世代"なのだが、今回はCoreプロセッサに合わせて第6世代Core mと呼ばれるそうだ

となっており、これでDesktop向けが18モデル、Mobile向けが28モデルとラインナップが一気に膨れ上がった格好だ。

Skylakeの位置付け - 既存製品のリプレースを狙う

Intelは発表に合わせて、Skylakeに関する資料もいくつか公開しているので、これをベースにSkylakの位置付けを少々説明したい。まずは市場環境からだが、冒頭にGamingの話が出てくるのだが、(日本ではともかく)世界的にはまだまだPC Gamingのマーケットが伸びが大きく、Intelとしてもここにコミットしていくことが示されている(Photo12)。

Photo12:もちろんConsoleゲーム機も一定のマーケットはあるが、最近流行のeSportsなどではPCの独壇場である

Form Factorとしては、2in1の出荷台数的が大きく伸びているうえに、製品も次々に投入されているという。(Photo13,14)。また、3年以上利用されているPCが、全世界で10億台以上あり、潜在的にはこれらの買い替え需要を狙う(Photo15)。Skylakeは、既存製品のリプレースというマーケットに向けた「史上最高のプロセッサー」という位置付けである(Photo16)。

Photo13:出荷台数の伸びは、ASP(平均価格)が低下していることの裏返しという面もあるように思う

Photo14:これは「スマートフォンをどの位の頻度で買い換えるのか」というのと同じであり、通常のPCよりも買い替えが早いのは理解できる。ただ、これもまた、ASPが低下していることの影響があると思う

Photo15:これは昔から言われている話ではある

Photo16:「史上最高」の理由が左下の6つであるが、ここにCPU性能そのものは入っていないことに注意

Skylakeは、4.5WのYシリーズから45WのHシリーズまで、10倍のスケーラビリティを持ち(Photo17)、U/YシリーズではI/Oに加えカメラ向けのISPまで統合されている(Photo18)。

Photo17:Desktop向けのKシリーズまで加味すると20倍になる

Photo18:IPCや電力管理、HEVCのサポートなどは後述

パフォーマンス面では、2010年に発表されたCore i5-520UMとCore i5-6200Uを比較すると、2.5倍の性能と30倍のグラフィック性能、3倍のバッテリー寿命を実現(Photo19)し、こうした古いプロセッサを搭載したマシンをSkylakeに置き換えることで、大幅な効率改善が見込めるという。

Photo19:パフォーマンスはSYSMark 2014、グラフィック性能は3DMark CloudGate、バッテリー寿命はHDビデオの再生時間でそれぞれ比較を行ったとか。ちなみにCore i5-520UMはArrandale、つまりCPUは32nm、GPUは45nmで製造されたMCMで、TDPは18Wとなっている

特にグラフィック性能に関して、第6世代Coreプロセッサでは2006年時点と比較して、100倍以上の性能向上を果たし、要するにDiscrete Graphicsを搭載できないMobile PCであっても十分なGraphics性能が実現できるとする(Photo20)。

Photo20:もっともこの100倍という数字は出典がIntelで、その根拠が良く分からない

具体的には、前世代のCore M-5Y71とCore m7-6Y75を比較すると大幅な性能改善が実現されるとしている(Photo21)。また新機能としてIntel SGX/Intel MPXなどの新機能に加えてWiDiやWiGig、Thunderboltなどを利用できる点もメリット、とする(Photo22)。

Photo21:ちなみにCore m-5Y71もCore m7-6Y75もTDPは4.5Wなので、絶対的な3D描画の性能そのものは推して知るべし。とはいえ、2in1のマーケットではそれなりに性能改善は体感できるかと思う

Photo22:WiDiとかWiGig、Thunderboltなどは基本別チップの形なので、必ずしもSkylake世代に限った特徴とはいえないのだが

ちなみにMobile向けに関しては、従来のCore Mが今回からCore M3/M5/M7とCore iと同様の表記に切り替わり(Photo23)、性能/消費電力比を大幅に改善した(Photo24)ほか、Mobile向けにXeon、およびUnlockのK SKUを新たに追加している(Photo25)。

Photo23:ロゴというかフォントも今回から変更になった

Photo24:絶対性能が折れ線(黄色)の方で、性能そのものは2013年殆ど変わらない(というか微妙に落ちている)が、消費電力が11.5W→4.5Wと大幅に削減されたことで、性能/消費電力比は大幅に改善されている

Photo25:ここでXeonはCore i7/m7と何が違うかというと、アプリケーション認証をちゃんと取得したOpenGLドライバが付属することだとか。要するに、Radeon/GeForceとFirePro/Quadroの違いと同じであり、CADなどのビジネスアプリケーションを内蔵グラフィックで正しく、かつ高速に表示できることが保障される形である

Skylakeの内部構成にも言及

資料では内部構成に関しても若干の記載があった。といっても深いところ話はあまりなく、IDFのTechnical Sessionの方がまだ詳しい情報が示されていたりするのだが、それはそれとして取りあえずその内容をご紹介したい。

まずパッケージに関して、今回は大きく分けて4種類のパッケージを用意する(Photo26)。Photo27がこのうちU/H/Sシリーズのもので、Photo28と29がYシリーズのパッケージである。

Photo26:パッケージのラインナップとしてはこの4シリーズ7種類になる

Photo27:左からUシリーズの2+3eと2+2、Hシリーズの4+4e、それとSシリーズの4+2

Photo28:左がYシリーズの2+2、その隣は以前のモデルを比較対象用に並べたもの

Photo29:裏面はこんな具合。これ以上パッケージを小さくするためにはボールピッチを詰めるしかないところまできているのが分かる

コアの内部構成はこんな感じ(Photo30)でHaswell/Broadwellと大きくは変わらないが、新たにISPの搭載、それとMemory ConrollerがDDR4をサポートしたのが主な違いとなる。IPC周りに関して言えば、内部のBuffer類は強化されていることが明らかにされている(Photo31)。

Photo30:以前の図と比べるとLLCの描き方が変わっているが、構成そのものは大きな変化はない(性能は改善している)模様

Photo31:Out-of-OrderのWindow数(要するにROP数)は224に強化されたというのは確かにうなづけるものがある。あと、LLCミスの際のスループットが倍、というのは要するにRing Busの帯域が2倍になったということではないかと思われる

省電力機構周りでは、新たにSpeedShift Technologyの搭載や、PowerGatingの粒度をさらに小さくするなどの工夫が行われたとのことだ(Photo32)。グラフィックに関しては最大40%の性能改善を実現(Photo33)する。

Photo32:このSpeedShift Technologyに関してはIDFで詳細が公開されているので、いずれご紹介したいと思う

Photo33:シェーダの構成そのものでは最大72EUであることがIDFで公開されている。またEUの構造も若干変更になっているが、これがそのまま性能に直結するわけではない(結局のところメモリがボトルネックであり、なのでeDRAMを搭載すると急に性能が上がる)あたりが数字としては難しいところ

また、以前に行ったCore i7-6700Kのレビューでは、HEVCに未対応としたが、実際にはHEVCのエンコーダも搭載していることが明らかにされた(Photo34)。ディスプレイ出力は最大3つの4K出力が可能とのことだったが、さすがに4K60fpsは無理で、4K30fpsどまりとの話であった。

Photo34:ただしHEVCのエンコードは8bit Colorのみ(10bit Colorはデコードのみサポート)で、利用するためには「対応したソフトウェアが必要」ということで、いまのところそれに対応したエンコーダソフトウェアは存在していない。ただ、イベントなどではサイバーリンク製ソフトウェアを使ったデモも披露されている

Photo35:3出力そのものは以前から変わらないが、少しづつ解像度は向上している

ということで発表内容は以上の通りである。なぜか今回はチップセットに関する言及が無いので、Z170に続くH170あるいはB150/H110、あるいはビジネス向けのQ170/Q150などがどのタイミングでリリースされるのかは定かではないが、プロセッサが発表された以上、そう遠からずこれらのチップセットも発表されるものと思われる。